〜神木と紀子〜
諜報員に恋愛は自由だ、もちろん結婚も出来るが基本的には本当の仕事を伝える事はない
「カミキ」にとっての「優先順位」は「任務」が第一である、プライベートもすべて「任務」あっての延長にあると考えている
あれから「カミキ」は仕事帰りに「お店」に顔を出すことが多くなった、もちろん紀子に会うためだ
「お疲れ様です!斉藤さん」
「紀子さん、もうすっかり吃らなくなったね!あれはあれで可愛いかったんだけど……」
「えっ?……そっそっそうなんですか?……可愛いだなんて……そんな……」
「あっ!やっとでた、ハハハ!なんか癒されるんだよなぁ……一緒にいると……だからついお店に来てしまう」
「こぉ〜………一緒にいると…………紀子は俺をいつも癒してくれるから、斉藤さん!わたしもです、じゃあ紀子!お礼に何が欲しい?、えっ?そんな……何が欲しいだなんて……キッキッキスを!、そんなのでいいのかい?、はい!お姫様のようにお願いします、そんなの俺のご褒美になるじゃないか、えっ?それって……紀子……斉藤さん……」
「ぷっ!……でた……ククク……妄想モード……」
「あれ〜?わたし……また声に出て……恥ずかしい」
気の合う二人はプライベートも会うようになり、惹かれ合い付き合うようになるにはそんなに時間はかからなかった
紀子は「カミキ」の住むマンションで半同棲のように通い、仕事も辞めて「カミキ」に養ってもらっている
「紀子、親に付き合ってること言わなくていいのか?」
紀子は「紀子」が本名である
「……うん……まだいいかな……ショウさんの親御さんは?」
「……俺に身内はいないんだ……紀子……大事な話しがある」
「ショウさん……もしかして……けっけっ結婚!」
「ぷっ!……紀子は本当に可愛いな!……先に言うなよ!……愛してるんだ!結婚してくれないか」
「――!……よっよっ喜んで……うう……嬉しい……こんなわたしを愛してくれて……」
「カミキ」の「優先順位」は「任務」から「紀子」に変わっていた
一緒にいればいるほど紀子に惹かれていく「カミキ」はすべてを打ち明ける覚悟でプロポーズしたのだ
諜報員の中には家族にすら「スパイ」であることを言わない者がほとんどだ
死ぬまで紀子に伝えない事が「カミキ」には耐えられなかった、「優先順位」がすでに「紀子」になってしまったからだ、だから「カミキ」は結婚する前に告げることにした
それが「カミキ」の「誠意」だと思ったからだ
「紀子……大事な話はもう一つある……実は俺は「斉藤匠」ではない」
「――え?……えぇぇ〜!」
「カミキ」はすべてを話したうえで結婚を受け入れてくれるか改めて聞くが、紀子はむしろ楽しそうにその話を聞いておりプロポーズの雰囲気では無くなってしまった




