〜エリィとエリ〜
「あっ!はい、えっと……わたしエリっていいます」
「――あっ!すみません、申し遅れました!わたしはエリィといいます……エリさんと名前似てますね!」
「――かっ!可愛すぎる……こんな人が存在していいのだろうか……これで惚れない男はいないはず……くぅ〜……推せる!」
「あの〜……推せる?」
「はっ!声に出てましたか!?エリィさん……わたし、こんなに可愛い子と名前が似ているなんて恥ずかしいです……うう……もうこんなわたしのことは「サトエリ」とお呼びください!」
サトエリはすっかり落ち込んでしまい俯いてしまった
「……」
「エリさん?大丈夫ですか……?エリさんはとても可愛いらしいのにどうしてそんなに悲観的なのですか?」
エリィはサトエリの背中にそっと触れるように優しく問いかける
「……うう……エリィさんはとっても優しいですね……今のわたしは世を忍ぶ仮の姿……所詮わたしは可愛い子に萌えるだけの一般人です……」
「「萌える」の意味は分かりませんが……エリさんの「気持ち」はなんとなく分かります……わたしも「気持ちをまっすぐに伝えれたら」とか「もっと積極的に出来たら」といつも思っています……あんな風になりたい、あんな事してみたいと……でも結局違うんですよね……誰かと比べても自分は自分なのですから」
「……エリィさん……神?……尊い……」
「ふふ、エリさんと話してると「大切な人」を思い出します……初めて会った頃の「彼」に似てます……始めは頼りなくて……でもいつの間にかわたしが「彼」を頼っていたんです……「彼」がいないともうダメになっちゃいました……ふふ、だからエリさんもきっと強くなりますよ!」
エリィは全てを包み込むような笑顔でそう言う
「……「彼」ってもしかして「宗谷斗真」くん?」
「――!知っているのですか!?トーマくんを!」
エリィはサトエリに縋るように尋ねる
「……はっ……はい!……一応、宗谷くんとは同郷です」
「――!同郷って……エリさんってトリッパーですか!?」
驚愕するエリィは身構えるようにサトエリから距離を取る
エリィにとってトリッパーは「あの三人」しか会った事がない、しかもエルフの里であれだけの虐殺を行った者達だ
サトエリの雰囲気からするとまったく想像できないことである
ガーリア帝国では「トリッパー」というだけで警戒することはないが、グリディアの民なら仕方のない事かもしれない
「――え?どうかしましたかエリィさん?……わたし何か嫌なこと言っちゃいました?……」
サトエリが心配そうに狼狽える
「……すみません……わたし失礼なことを……きっとエリさんはトーマくんと同じですね……「アース人」にもお二人のような方達がたくさんいると聞いていました……ではトーマくんは今エリさんと行動しているのですか?」
エリィは警戒を解きサトエリの側に近付く
「実は宗谷くん……記憶が無いんです!」
「――え?……」