〜胸に残る感情〜
ブラウンは意識朦朧としている兵士達をそのままに二人とアンバーをウバのもとへ連れて行く
「ヨヨヨ、ウバよ、この者達はスカイの知り合いらしいんじゃ」
「――!スカイの!……そうかい……あの子の……お前さん達はどこから来たのかい?」
「ウチらはグリディア王都から来たソ、内緒だけど……別に戦いに来たわけじゃないソよ!……ただ……「大切な人」を迎えに来ただけ……でも「スカイ」って子じゃない……「トーマ」って男の子……」
コーラルは落ち込んだ様子で俯く
「……ホホホ、「トーマ」……あの子の名前はそう言う名前だったんだね……「スカイ」っていうのはね……そこのアンバーがつけた名前だよ!」
「「――!」」
コーラルは意味が分からずアンバーを見るが、アンバーも困惑しているようだ
「ウバさん!わたし「スカイ」って子知らな……う……う……頭が痛い……う……うっ……」
アンバーの目から大粒の涙が流れる
「あれ?……なんで……わたし……泣いてるの?……」
「ごめんね……スカイには黙っている様に言われてたけど……わたしには無理だわ……ホホ……」
ウバは切なそうにアンバーを見る
「……どういうことなソ?……」
「……ホホホ……説明するわ……「スカイ」は記憶が無いのよ!……おそらく「トーマ」が本当の名前……両手にあんなモノを付けてる子なんて他にはいないから……碧く澄んだ目、黒ずんだ銀髪……それにグリディアの冒険者らしい服装……」
「銀髪?トーマっちは黒髪なソ……でも目はいなくなる前に碧くなってた……銀髪……どうして?……」
「ホホホ……それは分からないけど記憶障害の影響かもしれないね……でも間違い無いと思うよ……」
「……トーマっち……やっと会える!……う……」
コーラルも涙が止まらない
アイボリーは黙って背中をさすってあげる
「……言いにくいんだけど……このアンバーはスカイと付き合ってたんだよ」
「「「――!」」
「えっ?ウバさん何言ってるの?わたし誰とも付き合ったことないのに……「スカイ」って人なんて知らな……う……どうして……こんなに……」
「むぅ〜!トーマっち〜!こんなに可愛い子を!ウチらというものがありながら……」
コーラルは嫉妬により震えている
「ホホホ、「スカイ」を責めないであげてくれないかい、どちらかというとアンバーがぞっこんっだったんだよ!」
「――え?わたしが?」
「ああ、押し倒す勢いだったよ!……懐かしいね〜そんなに前じゃないんだけどね〜……アンバー、アンタとわたしの一生分の生活費は「スカイ」が用意してある……しかもこの貧民街を守るために「セブン」になんてなってしまって……」
「――!そうだったの……」
アンバーにはスカイに関する記憶が無いがアッサムが亡くなり、何故か借金も無くなっていた事はずっと疑問に思っていた
「ヨヨヨ、気付いていたんじゃな……「スカイがセブン」ということに……」
ブラウンはウバに問う
「ホホホ、まあね……あの子しかいないよ……自分を犠牲にして何もかも救うためにあんな事するなんて……だからアンバーがもしスカイのことを思い出しても、「時がきっと癒してるよ」……辛い事も何もかも……」
「……わたしは……どうしたら……」
アンバーはそこまでしてくれているスカイに対して申し訳ない気持ちでいっぱいになりウバに縋る
「ホホホ……会いたくなっら会えばいい、ただ……思い出さなくても「感謝」して欲しい……「スカイ」はアンバーを救い、この貧民街の「英雄」なんだって事を……はぁ……やっと言えたよ……これで荷が下りた」
ウバは穏やかにアンバーを見る
「……うん……」
記憶には無いが胸には残るこの感情をアンバーは静かに受け止めた




