〜友達〜
それから三か月経ちベニとアオにとって最悪な日を迎える
「……ベニ……わたしの順番来ちゃった……」
「アオ……こうなったら一緒に逃げよう!」
「――えっ!……ダメだよ……今まで犠牲になった子達に申し訳ないよ……」
「そんなの関係ない!わたしはアオと離れたくない!」
「……村が襲われちゃう……お母さんも……みんなも」
「村なんていい!わたしはずっとアオといたいの!」
「――!……だって……逃げたって……捕まって……う……うう……」
「アオ!大丈夫!逃げて直接助けを呼ぶの!二人で行けば辿り着ける!だってわたし達は最強のライバルだから!」
「……ベニが逃げたら村長も大変な事に……」
「ヨグじいなら分かってくれるって!」
「わたしのお母さんは?……どうなるの?」
「……それは分からない」
「殺されちゃうかも……」
「きっとアオのお母さんも逃げて欲しいと思ってるよ!」
「どうして分かるの!……ベニにはどっちもいないのに!……あっ……」
「……うん、分かんないよ……もういないから……でも絶対……」
「もういい!」
「アオ!」
アオは走って行ってしまった、初めてアオが感情的になっていた
アオはそんな事言うつもりはなかった、ベニの両親は鬼族に殺されたのだ
ただ怖くて、不安で、気の知れたベニにぶつけてしまったのだ
明日アオは「人身御供」になる
このままは嫌だった、喧嘩みたいに別れたくなかった
アオを連れて逃げる気持ちを固めたベニは明日朝の早朝にこっそり連れ出す計画を立てていた
しかし朝早くベニを訪れたのはアオだった
「ベニ!勝負しよ!勇者決定戦だよ!」
「――!……アオ……なんで……」
早朝から「フェード村」には大会の準備がされていた、昨日の喧嘩の後にアオが決断したのは逃げることではなかった
アオは最後にベニとの勝負を選んだのだ
夜中に「フェード村」を駆け回り、アオは村のみんなにお願いしたのだ
皆は夜を徹して準備をし「アオの願い」を聞き入れた
「さあ!ベニ!三種目勝負!」
「……う……う……うっ……ぐ……よし!いくよ!」
ベニは流れる涙を押し殺してアオの思いを受け取るように勝負に向かう
「フェード村」は久しぶりの大盛り上がりだった、大声援に応援団!
久しぶりのみんなの笑顔
ただその全員の笑顔の目には涙が溢れ出ている
溢れる笑顔と零れる涙、「幼い子供達が戦っているのに大人が盛り上げないでどうする」と言わんばかりの大声援!
「人身御供」の時間ギリギリで勝負はついた
最後の武術で勝負は決まった
膝をついたのはベニ
笑顔で手を差し伸べるのはアオ
「ベニ!これでわたし達は「生涯の友達」だね!」
「……アオ……う……うう……うん……ずっと「友達」……」
その後アオは旅立った