表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/217

〜聴啞の騎士と盲目の少女〜⑥

 ドイルは凄まじい速さで村に戻ると村のみんなの様子がおかしい事に気付く

 ほぼ全員が家の外に出て来ているが明らかに動揺している


 ――なんだと、皆まったく見えていないのか!――


 呪いのチカラが強まっている

ドイルはそう気づきサラの元に辿り着くと意識を失ったサラを魔獣が抱き抱えている


「サラハ、ボクノモノダ」


先程の魔獣だが声色(こわいろ)が少年のような声を出す

 

「………」


 ――こいつ、サラが小さい頃に森で会ってたという「ヴィー」という奴か……「ヴィー」はやはり人間ではなかったか……まさか「ネクロシープ」だったとは……つまりサラへの執着がこの「呪い」を生んでいるのか――


 ドイルは「ヴィー」と言う存在にある程度当たりを付けていた、そしてこれで確信する


「サラトボクノジャマスルモノハゼンインコロス!」


英雄ドイルvs魔獣ネクロシープ


 ネクロシープはサラを大事そうに地面に降ろすとすぐさま攻撃する!


「ダークレイ!」


黒い光線がドイルを襲う!


 ドイルは体内の魔力を大剣に(まと)わせ魔法を弾く!

 一気に詰める!


ネクロシープの剛腕を()けて大剣を打ち上げる!

 凄まじい剣圧とともにネクロシープの腕が飛ぶ!

大きな奇声をあげ叫ぶ


「ダークネスフィールド!」

ネクロシープはたまらず闇魔法で撹乱(かくらん)させる

 

気配は遮断されドイルに近付くネクロシープは渾身の一撃を横腹に突き刺す!

 

鈍い音とともにドイルの横腹に食い込むネクロシープの(こぶし)

 

 ――捕まえたぞ!――

脇腹に突き刺さった腕を捕まえるドイル!


 ネクロシープは腕を掴まれ逃げれない!


 ――終わりだ!――


 ドイルの大剣はネクロシープの肩から脇にかけ斜めに両断!


 ネクロシープは完全に戦闘不能となりダークネスフィールドの暗闇も晴れていく

 

 すぐさまドイルはサラのもとに行くと、優しく抱き抱える


 ――終わった……サラ待たせたな……これで目を覚ます頃には呪いも解けているだろう……戦友(とも)よ果たしたぞ……――


「サラ……ボクハ……サラヲ……アイシテ……」

 ネクロシープは息絶えた


――おそらくこいつがカーラを……――


 ドイルはサラを抱えて家の中に入っていく 


 切ない鈴の()を鳴らしながら


 数年前一匹の魔物が森の入り口で花を摘んでいる少女に恋をした

 

魔物は遠くから少女を眺めるだけだった

 

ある日その恋が魔物を魔獣に変えた

 

 魔獣は姿を見せられない、見せると少女が逃げるのではないかと思ったからだ

 

 魔獣の愛は増すばかり

 

(ゆが)んだ愛が一つの「呪い」を生んだ、呪いは少女の視力を奪ったのだ

 

 魔獣は「言語」を話すようになり少女に近付いた

 

決して触れたりはしなかったが森に来るたびに魔獣と少女は会話をして友達になった

 

 少女にとっても、上手く喋れない男の子と目が不自由な自分は気兼(きが)ねなく接する事が出来たのだ

 

 ある時、少女は母親に危ないからもう森には行かないように言われた

 

 少女は悲しくなって「もう会えないから」と泣きながら魔獣に伝えたのだ

 

 魔獣は激怒し少女の母親を殺し、村の人々にも「呪い」をかけた

 

 そして少女の光はすべて消えた


 トーマとエリィが村に着くとジェラが走って来た

「トーマとエリィだね!視えるよ、視えるんだよ!」

「――っ」


「本当ですか!ジェラさん!良かったぁ」

興奮するジェラと抱き合うトーマとエリィ

 良かった本当に良かったと三人とも泣きながら、ジェラは「ありがとう!」を連呼する


 村の入り口には皆がトーマとエリィを(たた)え、集まり泣いている

 

 そんな皆を見てトーマは涙が止まらなかった

 

「――っ」

エリィも(うつむ)いて少女のように泣いていた


 村の皆と喜びを分かち合ったトーマとエリィはドイルとサラのもとへ向かった

 トーマの体は治癒魔法で回復はしてもらったが万全ではない

 本来なら歩くこともままならない、森からの道中はエリィの肩を貸してもらってやっと辿り着いていたのだ

 玄関の前まで行くと扉が開いた


 ドイルは横腹に血が(にじ)んでいるにもかかわらず二人を見ると自身の両脇に抱き寄せた

 

「しっ師匠……」「ドイルさん……」

「……」


 ドイルの抱擁(ほうよう)から二人に対する感謝が伝わる

エリィはドイルの横腹を見て慌てて治癒をしようとするがドイルはそれを必要ないと手で制した


「ドイルさん?……」

 エリィは何故なのか不思議に思い、ドイルを見上げると笑顔で(うなず)くだけだ

 

 そのままトーマに大剣を渡し歩いて行く


「どっか行くんですか?サラちゃんが起きた時、師匠がいたほうが……」


 トーマが言い終える前に黙って歩いて行く

 

歩くドイルからも、渡された大剣からも鈴の()は鳴らなかった

  

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ