〜ビリジアンは王女に恋をする〜④
「トーマくん!ごめんなさい!起きてくれて嬉しいのにびっくりしてしまって……」
エリィは顔を真っ赤にし恥ずかしがって俯いてしまう
「……心配かけてごめんね、治癒もありがとう!エリィなら絶対治してくれるって信じてたよ!」
――待って待って!エリィは寝ているオレにチューしようとしてなかった?してたよね?マジ?これマジなの?キタよねこれ?オレの時代だよね?エリィはオレのこと好きなの?どうなの?聞いちゃう?もう聞いちゃおっか?とにかく聞き方だよね?キモくならないように細心の注意したほうがいいよね?――
「……エリィ……エリィはオレのこと……どう想っているの?」
トーマはいつもよりもちょっと低い声でカッコつけて聞いている
「……トーマくん……わたしトーマくんのこと……」
――ゴクリ……――
「トーマ様!お目覚めになられたとお聞きしました!」
一番いいところでシルフィアとウシャスがやってきた
「………………シルフィアさん……とウシャスさん」
――なんてことをしてくれたんだ!この二人は!こんな雰囲気めったに無いのに……ううっ……うっ――
トーマは心の中で泣いた
「お二人とも無事で何よりです!」
トーマは平静を装う
「この度は本当にありがとうございました!トーマ様にご迷惑をおかけして申し訳ございません!」
「トーマ様!感謝してもしきれません!」
シルフィアとウシャスは深々と頭を下げる
「いえいえ……あとオレのそばも危険ですからあまり一緒にはいないほうがいいかもですね」
――さっきのいい雰囲気を持ち直して!エリィと!――
「このような状況で申し上げにくいのですがお願いがありまして……」
シルフィアはトーマに近付いて手を取る
「――えっ!」
「――!」
トーマは突然シルフィアが手を握ってきたのでびっくりしたが、エリィは察して俯く
「トーマ様!どうか娘の王女オリーブと契りを結んで頂けませんか?」
「……はっ?」
トーマは一瞬理解出来なかったがシルフィアにエルフの歴史と神託による滅びの運命を変える話を聞かされ、なぜ自分にお願いしてきたのか理解した
――オレがアゥフである事が一番大きいんだろうな……――
「……」
エリィはそばでトーマの答えを待つ
「あれ〜いいんですか〜?ビリジアンのことは?トーマくんも知らないでしょ〜オリーブ様にはすでに心に決めた人がいるってことを!」
トーマが口を開こうとした時、ビオルクが開いていた扉の縁にもたれて話しかけてきた
「「――!」」
シルフィアとウシャスはビオルクの言葉に動揺を隠せない
「――ビオルクさん!来てくれたんですね、ありがとうございます……それで……今の話は?」
トーマは聞き捨てならない事を聞いたのでビオルクに尋ねる
「いや〜それがね〜第七騎士団のビリジアンって色男がいてね、コイツがもうオリーブ様が好き過ぎて四年も恋してるんだよ!……僕が見る限りオリーブ様も好きだね!」
「ビオルクさんが言うなら間違いないですね!……むしろこの件はビリジアンさんが受けるべきです!という事でオレはお断りさせて頂きます!」
「トーマくん……」
エリィは安堵する
――あぶね〜なんか話聞いたらスゲ〜断りにくそうな感じだったから、どう断ろうか悩んでたんだよな〜ナイスタイミング!ビオルクさん!――
「そうだよね!トーマくんにはいっぱい彼女いるし」
「ちょっと!ビオルクさん!また誤解されるようなことを!……ねぇ?エリィ……?」
「……知りません!」
エリィがそっぽ向く
「エリィ?……エリィさん?……違うんだよ!ビオルクさんが言ってるのはね……コーラル達のことで……あれっ?そういえば二人は宿にいるの?……心配になってきた!すぐに宿に行こうエリィ!」
「あっトーマくん実は……」
トーマがベッドから慌てて立ちあがろうとする
「駄目なのです!……ビリジアンでは……」
シルフィアがトーマを引き留める!
「「「――!」」」
トーマ達は急に大きな声で引き留めるシルフィアに驚き、話を待つ
「……ウシャス……ビオルク様やエリィ様にも分かるように今からわたしが言うことを通訳して下さい……」
「……分かりました」
「エルフの神託については先程お話ししたようにお分かりいただけると思いますが……二十年前に人族と契りを結んだのは……わたしなのです!」
「「「――!」」」