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4話 大騒ぎの教室

「何してるの?」

「何をしてるのかしら?」


 氷のように冷えきった声色。

 刹那、冷や汗が背中を伝った。

 春真っ只中なのに……なぜか寒気が……

 

「じ、実は今、宮川さんに連絡先を教えてほしいってお願いされてて……」

「ふぅん」

「へぇ」


 無言で俺を凝視して返事を待っていた2人に正直に状況を説明すると、素っ気ない反応が返って来た。

 そして2人は視線を俺から宮川さんへと移すと、ニコリと微笑む。


「ごめんね、宮川さん。私達、これからお兄ちゃんと一緒に記念写真を撮るの」

「連絡先の件は、また後日にしてくれないかしら?」

「は、はい。わ、分かりました」


 宮川さんはブンブンと首を勢いよく縦に振って了承の意を示す。


「ありがと」

「ありがとう、宮川さん。それじゃあお兄様、行きましょうか」

「あ、あぁ」


 沙紀と麗華にやや強引に引っ張られながら、父さん達のところへと向かう。

 その途中、2人はため息とともに言葉を零した。


「はぁ。目を離すとすぐにこれだよぉ」

「……まったく。油断も隙も無いわ」

「何の話だ?」

「「こっちの話」」


 お、おう……

 息ぴったり、さすが双子。

 呆れた様子の2人とは対照的に、そんな呑気な事を思ってしまう俺なのだった。

 

 


 あの後、写真を撮り終えた俺は、入学式に参列する為に体育館へと向かった父さん達と別れ、クラス割が張り出されている校内掲示板へとやって来ていた。

 

「えっと、俺のクラスは……」


 1組から順に目を通していく。 

 

「……3組か。お、また秋菜と同じクラスだ」


 クラスメートの名前を確認していると、見知った生徒の名前が目に止まった。

 

 雛森秋菜。

 小学生一年生の時に出逢った幼馴染。

 秋菜とは小学一年生の時からずっと同じクラスであり、この展開は予想していたので特に驚きはない。

 が、俺は話し相手が少ないので、気兼ねなく話せる仲の秋菜とまた同じクラスになれたのは素直に嬉しい。

 

 周囲を見渡してみるが、秋菜の姿は確認出来ない。

 もしかしたら既に登校していて、先に教室に行ってるのかもしれないな。

 俺も新しい教室へと向かう事にしよう。




 『2年3組』と書かれたクラスプレートが廊下の先に小さく見える。

 近づいて行くと、教室の中から生徒達の賑やかな声が廊下まで聞こえて来た。

 チラッと中の様子を伺うと、既に半数近い生徒が登校していた。

 秋菜は……まだ来てないのか。

 まぁ、秋菜が遅刻するとは考えられないし、きっとすぐに登校して来るだろう。


 教室の中に入り黒板に書かれている席順を確認する。

 俺の席はベランダ側の列の一番後ろだった。

 そして席に向かおうと振り返った時、

 

「えっ」


 教室にいる生徒全員の視線が俺に向けられ、先ほどまで教室を包んでいた喧騒がピタリと止み、凪のような静寂が訪れる。

 しかし次の瞬間、大きな騒めきが起こった。

 

「な、なぁ。あいつ誰だ?」

「わ、わからん。あんなイケメン、この学校にいたっけ?」

「えっ!? めちゃくちゃかっこよくない!?」


 な、なんだ……

 皆んな俺を見て、どうしてそんなに驚いてるんだ……

 軽いパニック状態に陥ってしまう俺。

 するとそのタイミングで、軽快な挨拶とともにとある男子生徒が教室に入って来た。


「ちーっす。って、なんだなんだ。何かやけに騒がしいな

「……宏也」


 上村宏也。

 去年、同じクラスになった事で知り合った、晴翔の数少ない話し相手の1人である。

 また、コミュ力が高くてイケメンな上、誰隔てなく仲良く接する人当たりの良さも兼ね備えた人気者だ。


「おっ、その声。マイフレンドの晴翔だな。また同じクラスになったな、晴――えっ」


 コチラに振り向いた宏也は俺の顔を見るやいなや、驚愕の表情を浮かべて固まる。

 あ、あれ……この光景、なんか昨日も見たような……

 

「えっ……晴翔なの、か?」

「あ、あぁ。正真正銘、日野晴翔だぞ、宏也」

「……マジか。晴翔、お前……」


 そして宏也が何か言葉を紡ごうとした瞬間、


「……」


 宏也の背後で、見覚えのありすぎる女子生徒が静かに佇んでいるのが見えた。


 肩下まで伸びた美しい茶髪。

 目鼻立ちはスッと通っていて、可愛いよりも綺麗が似合う学年一と言われている美少女。


「秋菜」


 幼馴染の雛森秋菜だった。

 少しでも面白い、続きが読みたいと思っていただけたのなら、ブクマしていただけると幸いです。

 作者のモチベーションに繋がりますので、どうぞよろしくお願いします。

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