1話 入学式前日
「……いよいよ明日かぁ」
満開の桜が咲き誇る春。
目的地に向かっている途中、日野晴翔はそう呟いた。
明日は晴翔が通っている高校の入学式。
そして同時に、義妹の双子の姉妹が入学してくる日でもある。
双子の姉、日野沙紀。
双子の妹、日野麗華。
沙紀は明るく天真爛漫な性格。
対して、麗華はクールビューティーで物静かな性格と、2人は双子ながら真逆の性格をしている。
しかし、そんな2人も共通して言える事がある。
それは、2人が超絶美少女な事だ。
身贔屓を抜きにしても、2人が超絶美少女なのは疑いようの無い事実。
実際、街を歩けば必ずナンパされるし、スカウトに声を掛けられたのも一度や二度ではない。
また2人とも顔だけでなく、スタイルもモデル顔負け。
……今更だけど、ほんと凄い姉妹と家族になったよなぁ。
2人と家族になったのは3年前、俺が中学2年生になってすぐの時だった。
父さんの再婚がキッカケで、2人と義理の兄妹になったのだ。
最初は年の近い異性と一緒に暮らす事に戸惑いを覚えていたが、少しずつお互いに歩み寄っていき、今ではとても仲良しだ。
数ヶ月前、2人から俺が通っている高校に外部受験をする意思を伝えられた。
てっきりそのまま内部進学すると思っていたので、かなり驚いたのは今でも鮮明に覚えている。
優等生の2人は難なく合格を勝ち取り、そしていよいよ明日、2人が俺の通っている高校に入学してくる。
入学早々、2人が注目の的になるのは容易に想像がつく。
俺が2人の義理の兄だという事もすぐに知れ渡る事になるだろう。
俺はオシャレにまるで無頓着なので、外見の印象があまり良くない。
2人の評判の為にも、ちょっとは身だしなみに気を遣った方が良いよな……
そう考え、俺は近くにある評判の良い美容室に行く事にしたのだった。
「いらっしゃいませ。こちらへどうぞ」
美容室に着いてすぐ、イケメン美容師に席へと案内される。
「今日はどういった髪型にしますか?」
「えっと、この中から俺に合いそうな髪型を選んでほしいのですが……」
俺は前もってリストアップしておいた髪型の候補をスマホの画面に表示させ、美容師さんに見せる。
「ほうほう。なるほど。お兄さんならどの髪型でも似合うと思うけど、一番似合うのはこの髪型かな」
「なら、それでお願いします」
「オッケー。それじゃあ、早速カット始めるね」
「はい。よろしくお願いします」
「はい、終了ー。お疲れ様」
「あ、ありがとうございました」
……な、なんか凄いな。
髪型が変わっただけなのに、まるで自分じゃないみたいだ。
「どう? 結構、良い感じに仕上がったでしょ?」
「は、はい。めちゃくちゃオシャレだと思います」
「お兄さん、元が凄く良かったからね」
そんな嬉しい事を言われたのは人生で初めてだ。
この人、めっちゃ良い人だ!
次から髪を切る時は、この美容室を利用しよう。
「ね、ねぇ。あの人、めちゃくちゃカッコ良くない?」
「うわ、本当だっ! モデルかな?」
……な、なんかめちゃくちゃ注目されてる気がする……
でも、どうしてだろうか……
結局、考えても答えは出てこず、気がついたら家の前まで来ていた。
果たして家族の反応は……
期待と不安が胸の中で渦巻く。
「ただいま」
扉を開けて中に入るとドンドンと足音が響き、少しして義妹達が姿を見せた。
「おかえりっ、お兄ちゃん!」
「おかえりなさい、お兄様」
黒髪のボブカットの美少女、双子の姉の日野沙紀と。
黒髪のロングの美少女、双子の妹の日野麗華だ。
「ただいま。沙紀、麗華」
「もぉ。お兄ちゃん、遅いよ。今まで何して――えっ」
「お兄様。一体どこに行っ――えっ」
俺の姿を見て、2人は目を大きく見開いて口を開けたまま固まった。