眠れない夜
今夜も眠れない。
律子はしばらく布団の中で目を閉じてじっとしていたが、立ち上がってトイレに行くことにした。
さて、トイレはどっちだったかしら。部屋は薄暗く、扉を開けると廊下の向こうにはいくつか部屋があるようだが、どうもはっきりしない。どれがトイレのドアだったろう?一つ一つ開けてみたらいいだろうか。そうして一つ目のドアを開けた時、足を伝う生暖かい感触があった。
「しまったわ」
やってしまった。トイレが間に合わなかったらしい。ズボンは濡れ、廊下には水たまりができた。途方に暮れて足で水たまりをこすっていると、金切り声がした。
「何やってるのお母さん! 何なのよもう、オムツはどうしたの? また脱いだの? 」
オムツ? オムツなんて赤ん坊でもないのにしているはずがない。そう言えば寝ているときに何だかズボンの下がモゴモゴするから変なものを取ったわね。
知らない女はギャーギャーとわめきながら乱暴に律子のズボンを脱がせると、それで廊下の水たまりを拭い、丸めて持ってどこかへ消えた。
よく分からないけど怖い。あの人は怖い。大きな声を出して私のズボンを取った。逃げなきゃ。律子は走り出した。しかし思うように足が動かず、派手な音を立てて廊下に倒れ込んだ。慌てたようにあの女が戻ってくる。
「お願いだから大人しく寝ててよお母さん。もうやめて」
よく見ると知らない女は泣いている。律子の手を掴むと乱暴に立ち上がらせ、部屋へ引っ張って行って布団の上に転がした。
「起きないでって言ってるじゃない。どうして分かってくれないの」
女は泣いている。律子もつられて悲しくなってきた。どうしていいか分からずに枕をいじっていると、裸だった下半身にはゴワゴワした何かがつけられて、ズボンを穿かされた。
「もうオムツ取らないでね。お願いだから寝ていてちょうだい」
女は深いため息をつきながら立ち上がって言った。
「やっぱり今夜も眠れない。もう、一緒に永遠に眠ろうか? 」




