花火大会にちなんで記念SS
花火が綺麗ですね。
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今日は、遊助さんの運転で、遠方の花火大会へ連れて行ってもらう日だ。
俺は、心の底からこの日を楽しみにしていた。
家の玄関を開けて、「行ってきまーす」とお母さん達に聞こえるように告げた後、待ち合わせをしていた場所へ移動する。
◆◇◆◇
花火大会には、浴衣で行くと趣がある。
日本に住んでいたならば、誰もがしる風習ではないだろうか?そのため、お母さんに無理を言って、着物を借りたのだ。
暫く待った後、普段の服装とは異なり、花柄の着物を身に纏った沙織と黒い着物を着こなし、手には扇子を持った遊助さんがいた。
「ふふふ…紗夜ちゃん、その着物とても似合っているね。誰のためにそんなに可愛くおしゃれしたのかは分からないけど、きっとその娘は喜んでるんじゃないかな?ところで待たせてしまったかい?」
分かってるくせに…
「私も、今来たところです。それよりも遊助さんも沙織さんもとても着物が似合ってきますね」
「沙織の方へ顔を向けてる人に言われても説得力が…」
「さ、さーやあ、ありがとうございましゅ」
遊助さんの言葉を遮るくらい沙織は嬉しそうだった。
その後、遊助さんの車に乗り花火会場へ向かう
30分後、到着した。
会場は、花火大会までまだまだ時間があるにもかかわらず、人で混雑していた。
そのため、俺達は、大きいレジャーシートを敷き場所を確保する。
「紗夜ちゃん、沙織、せっかくだし、屋台を見に行っておいでよ。僕は、ここでノンアルコールを楽しんでおくからさ」
ったく…この人は、俺を信用してるんだかどうだか、それでも…せっかくの花火大会だ。それも悪くない。
「沙織が嫌じゃないなら、回ろっか。ほら、手」
「は、はい」
沙織の手は、あったかく、ずっと繋ぎたくなる心地よさがあった。
「たこ焼き!!!たこ焼き買おう!!」
「さ、さーや、は、速いです!!」
「ごめんごめん、こうすれば大丈夫かな?」
俺は、沙織の手ではなく、腕を組み、逸れてしまわないように固定した。
「ひゃ…ひゃい」
あれ何で照れてるんだろ…って腕組みってよく考えれば、恋人繋ぎより上のステップだったような…あはは。
沙織をチラリと横見し、嫌そうではない事を確認したのでそのままにした。
たこ焼きを1人分買った後に、2人で分けて食べ合いっこした後は、綿飴屋さん…そして射的…遊助さんからそこそこお金をいただいていたのでなかなか奮発させてもらった。
普段、意地悪してくる人には、これくらいの図々しさがいいのだ。
その後、元のところへ戻る。
「いい頃に戻ってきたね…って2人ともお腹いっぱいそうだね?」
「「ご馳走様でした!!!」」
「紗夜ちゃんの入れ知恵かな?まぁ僕はこう見えてそこそこ稼いでるから、痛くはないんだけどね」
この金持ちガァァァァァァァァァァァァァ
そして、その後は、レジャーシートの上で空を見上げる。
ヒュー…ババババン
花火が上がった…
赤を彩ったと思えば、消えた瞬時に緑を彩ったり一瞬の間に様々な物を彩る。
「綺麗だ…」
「さ、さーやの方が綺麗でしゅ」
「え?」
「な、何でもないでしゅ」
嘘だよ…例え、花火が咲いていても、君の声だけは逃さないよ。
ただ、沙織が、あまりにも可愛かったから意地悪をしたくなっただけ。
花火は、その間も上がり続けて、最後のフィナーレに包まれる。
周りからもたくさん歓喜の声が上がる。
遊助さんもノンアルコールのはずなのに、酔った親父さんみたいに立って「いいぞー」「たーまやぁぁぁぁ」と叫んでた。
彼の普段の爽やか系イケメンキャラは、どこに行ったんでしょうか。
それを傍目に俺は、沙織の肩を抱き寄せ、彼女の耳に囁いた。
「君の方が、私よりもどの花火よりも綺麗だよ」
この声が、聴こえていたのかはどうかわからないが、それでも、帰り道の際に、彼女から恋人繋ぎを求められた時には、思わず、照れてしまった。
遊助さんは、それを見て「何かいいことでもあったのかい?」と私達に揶揄ってきたが、沙織は、それを無視して、俺に「い、行きましょう」と笑顔で車まで恥ずかしながらも、堂々としていた。
それがたまらなく愛おしくて、
「沙織 私もだーいすきっ」
彼女の右頬に口付けをした。
遊助さんもこれには、驚いた表情をしていたが、すぐにいつもの意地の悪そうな顔になり、私達を車へと先導し私の家へと送り届けてもらった。
——この世界にきて良かった
——心からそう思えた瞬間だった