友達?恋人?
いいね感想気軽にください。
沙織を介抱し終えた後、俺達は、沙織のお母様に「御飯ができた」と呼ばれたので、彼女に食卓へと案内してもらう。
歩いている間に、ほんの少し前の出来事を思い出す。
俺に膝枕で介抱されて、起きた沙織はなんだか新鮮だった。
「ご、ごめんなしゃい」と必死に謝りながらも、中々私の膝から離れようとしなかったあたり…気に入って頂けたのかもしれない。
食卓に着いた時、思わず、驚愕してしまった。
まず、席が10個近くあり、机の上には、サラダを始め様々な美味しそうなご馳走が広い机に並んでいた。
高槻家では、椅子が5個しかない。
特に美味しそうだと感じたのは、鶏の照り焼きだ。
自宅で、お母さんが、作るご飯も家庭的で美味しいのだが、流石にこれほどではない。
この世界のテーブルの作法などは、全くわからないため、沙織の真似をしながら、食べる。
「ところで、紗夜ちゃんは、沙織のことどう思ってるのかな?」
やめてください。
口から先程食べた照り焼きが、『こんにちわ』しそうになったじゃないですか。
…そういうのは、幼馴染の男の子とか遊びに来たときにいうセリフでは?
——あっ…主人公のイベントを潰したの私だった。
「良き友人であり、今後とも仲良くしたいと考えております」
無難に答えておこう…
「…それは沙織を人としてかい?それとも情報を得る手段としてかい?」
「お、お父しゃま?」
「あなた!?」
この人は、私の接触した目的に気づいてるんだ…
どんな手品を使ったのは、わからない。
これは、推測になるが、魔法かそれに等しいい物だと思う。
確かに、最初は、花見沙織という人物を俺は『情報を得る手段』としかみていなかった。これに間違いはない。
しかし、少しの間とはいえ、彼女の様々な面を見て未だに、『NPC』などと世迷言を吐くわけがない。
彼女達は、彼女達の意思で動いている。これも紛れもなく真実だ。
「私は沙織の親友です。今日会ったばかりでなんで親友と自称してると思われるのであれば、そう思ってもらって大丈夫です。この言葉に、説得力を帯びさせるには、長い年月と信頼が必要なことも、自負しております」
「ふふふ…その言葉を信じてみようじゃないか。紗夜ちゃん、少し意地悪をしてしまったお詫びだ。私は聖スタレチア学院の学院長との古い仲でね、少しばかり融通がきくんだ」
これは…花見沙織の父が、聖スタレチア学院長とのパイプがあり、付け加えるならば、暗に私と一緒のクラスにできるぞっと告げているのだろう。
だが、私としてもそれが望ましい。
「それは期待しても…?」
「ふふふ…君の考えてる事で合ってると僕は思うよ」
——彼女の父親が、初めて、こちらへ、心から笑ったのをみた…きがする。
彼も、きっと沙織が、心の底から大事なんだと改めて自覚した。
——だから俺を試したのだと
「さーや…大好きっ」
俺と彼女の父親との会話で、真っ赤になっていた沙織だったが、何かを決意したかのように俺へ振り向き、さっきの言葉とともに俺の頬にちゅって音が鳴った。
全身の体温が、高くなっていくのを感じる。お風呂の余熱は収まったはずなのに、不思議な現象もあるものだ…。
「あらあら…今日会った子に、沙織がキスだなんて大胆になったわねぇ」
「まぁまぁ、前途有望な紗夜ちゃんになら許せるさ。どこぞの馬の骨ならば、今頃◯◯してるくらいだけどね」
…この人はどこまで俺のことを知っているのだろう。
しかし、女の子に憑依できて初めてよかったと思えた。…男だったら、今頃生きていなかった…。
「まぁまぁ〜、それでは私達の大事な沙織のファーストキスを奪った方、冷めないうちに、是非お食べください〜」
沙織のお母様は表情は笑っているのに、眼が笑っていない…明らかに責任を追及するかのような眼だ。
「え、あ、はい」
こうなりゃ、やけだ…
しかし、この時点でゲームとは、大きくかけ離れてしまった。
最初は、いずれ出てくる主人公のことばかりを気にかけていた。
——しかし、事実は異なる
中々、俺の思い描いたシミュレーションとは異なるが、それはとてもいい意味だった。
——心が暖かい…
花見家の美味しいご飯を食べ終えて、帰宅しようかと準備をしていたところ、宿泊の許可もついでにもらっていたそうで、夜も遅かったことからなんの準備もしていなかったが、沙織の部屋に泊まることになった。
いくら同性同士とはいえ、先程のやり取りもあったにもかかわらず、よく許可したな…と感心する。
「沙織…今日はお家に招いてくれてありがとう!!沙織のお父様もお母様も素敵な人だねっ!!」
「さーや…こちらこそです。えっと、末永くよろしくお願いいたしましゅ…」
どういう意味かな?友達として…だよね?