2人目のヒロイン
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夜の学院は、基本的に静かだった。教師といえど…人である。つまり、自身に家族を持つ者であれば、自宅に、そうでない者も自宅や飲み屋などに出ている。
そして、私の目の前には自身の体格と合っていない魔法師のローブを着込んで、ドヤ顔をしている残念お嬢様…がいる。
一方で、私はあまり決闘に乗り気ではない。その理由として、勝つことが決まっていること、沙織が明日からも中々口聞いてくれないのではないか?と不安なところなどの懸念点があり、モチベーションはかなり低い。
「賭けの対象は?」
「あら?この学院のシステムくらいは熟知してるのですね。わたくしが賭ける物は、天童家の犬ですわ」
…え?このお嬢様?とんでもないこと口走ってる気がするんだけど…犬から棲家を取り上げる気?
「誤解しないで欲しいので言いますけど…差し上げますのは産まれたばかりの子犬ですからね…」
…まぁそれなら…いや、いい。そうしよう。
「…子犬2匹でよろしく。私が賭けるのはこの剣ね」
「あらあら、そんな立派なものあげても宜しくて?」
いや、君は、まず犬の親に謝ろうね?うん。子犬を引き剥がすんだからね?うん
「じゃ…このコインが地面に落ちたらスタートで」
私は、コインを空へと飛ばす。
——地面に落ちた瞬間
「さぁ、高槻紗夜、どこからでもかかっておいでなさい。わたくしの華麗な魔法で迎え撃ちましょう。『炎魔…』」
私は一瞬で天童綾香の背後に周り、彼女の首に剣を当てていた。
彼女が、最後まで自身の言葉を言えなかったのは、そのためである。
「そ、そんな…貴方何者…」
「…別に隠してたわけじゃないよ。私は、私の守りたい者のために、この剣を取ったんだ。要は、全て私のエゴなんだ。もちろん、ここまでなる為に、何度も死にかけたんだけどね」
——その言葉を聞いた瞬間、天童綾香は膝を地について呆然としてしまった。
天童綾香自身は、むしろ、入学前から誰かに教わったのかもしれないが、魔法を行使できるのは、優秀の証である。
そんな魔法の取得の大変さを知っている彼女は、自分が馬鹿にされたからと錯覚して、真の強者に決闘を挑み大敗を喫した。
——わたくしなんて初めから相手されていなかった。いや、眼中にすらなかった。
「犬の赤ちゃんは、約束通り貰うけど…もう私の友達の綾香に剣を振り向かせないでね?」
剣を鞘へ納めた後、彼女は月の光に照らされながら、先ほどの言葉と共に、最高の笑顔を見せ、彼女の頭を優しく撫でた後、学院を去っていった。
◆◇◆◇
「あの方…かっこ…よすぎますわよ…わたくしとしたことが…女の子相手なのに惚れちゃいました…」
一応、弁明しておくと、高槻紗夜の言葉は、『もっと仲良くしようよ』だったのだ。
しかし、綾香の目には、誰かを守るために、ひむきに努力して来た剣で、些細な理由で決闘を挑んだ相手にも友達と呼び、笑顔で去っていった…あの姿はまさしく、綾香の憧れであり…同時にときめく瞬間だった。
「お父様に報告しましょう…」
胸に手を抑え、自身の心臓の高鳴りに一旦蓋を閉め、前を向き、彼女は学院を抜ける。
◆◇◆◇
「やっぱり、流石はメインヒロイン、天童綾香も可愛いなぁ。あの金髪ロール、瞳が透き通るような翡翠、胸も大きいし、すごくいいね!!!」
決闘を早々に終え、彼女は帰り道へ急ぎながら、独り言を呟く。
「さーや?何がいいんですか?」
いつのまにかいた沙織に肩をガシッと掴まれ、逃げられなくされてしまい、悲鳴を上げながら、沙織の部屋へとずるずる運び込まれる姿は、先程の凛々しい彼女とは全く異なる姿だった。




