ヒロvs高槻紗夜
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「どうした…高槻紗夜攻めてこないのか!!!」
「…お前は…いや、なんでもない」
俺は、改めて彼と対峙する。
——ステータスなんて見なくてもわかる。近くにいるだけで、全身が警鐘を鳴らす。
明らかに『格上』である。
自分でも強くなったとは思っていた。
いくら、自分で育てた愛のあるキャラクターとはいえ、ここまでの差が生まれている事は、高槻紗夜の想定外だった。
『炎魔法 爆炎業火』
ヒロは、俺の放った炎の超級魔法に対して、何も動じずに、剣を一振りするだけで、俺の最強魔法を消しとばした。
——勝てるはずもない
——逃げるか? 答えは否っ!!
魔法を消すことが出来るのは、素晴らしい。認めよう。俺が今のヒロに勝てるビジョンは全くもって見当たらない。
——ただ、一矢は報いてやる!!
『水魔法 濁流王』
水で形成された王様が、咆哮を上げ、ヒロへ襲いかかる。
先程の剣で、薙ぎ払うのかと思われたが…彼は、水の魔法攻撃に直撃した。
——何考えてるのか分からないけど、その隙は見逃さない!!
『雷魔法 雷電極弾』
これに対しても…ヒロは一歩たりとも後ずさる事はない。
——なぜ?
これじゃまるで俺に殺されにきてるのと同じだ
俺は、次々と魔法をヒロへ容赦なく放つ…そして、ボロボロになったヒロに目掛けてトドメと言わんばかりに…
——魔法ではなく、拳を頬へ振りかざした。
「なんで…!!戦えよ!!お前なら、俺に余裕で勝てるだろ!!!なぜ、その力を奮わない!!俺が欲しくて、喉から欲しい力をお前が持ってるのに…!!戦え!!!戦え!!!…戦ってくれよ…悔しい…よ…」
——気づけば、俺は彼の肩に両手を預けていた…
「お前こそ、目を開けろや。お前は、誰にその力をもらった?お前はこのゲームをなんであそこまで、頑張って強くなった?」
そんな自身の無力に苛まれる俺に対して、彼は、俺を諭しながらも、俺を優しく抱き止める。
ヒロへの解答は…それはもちろん。最初は、色んな人との恋愛シミュレーションができるのが楽しく…て高梨紗夜の性格が好みだったから、それで惚れた。答えなんて決まっている。
「愛する、高槻紗夜のため…だよ…」
「なら、俺がお前を殴れるわけねえだろ!!!お前は本物の高槻紗夜だ!!これから、この世界の未来はお前…高槻紗夜が切り開いていく。それに俺はもう…長くない。だから…一思いに殺してくれ」
だから…こいつは、自分より強い敵の存在を示すことで、俺にもっと強くなれって意味で最初の一撃を消し去ったのか?
——それに気づかせて俺に殺されるために?
「あっ…あぁあぁぁぁぁぁぁぁ」
手で震えながら、発動する魔法をヒロは自身の心臓に向けて、にぃっとした笑顔を俺に見せた。
——なんで…なんでだよ!!!なんでこんな、こんないい奴が死ななければならないんだ!!
——できれば…こいつと親友になりたかった…
「そしてこの力を…お前に託す。だから、あとはさーや…頼んだぞ…」
涙を溜めて、俺はヒロへと手を下す。
地面を何度も叩きつけ…大声で泣き叫ぶ彼の姿は…見守ってくれていた背中である父親を失った子供のようだった。
◆◇◆◇
…誰のために今まで、恋愛ラブ魔スターをやってきた?
ゲームのパッケージを見つけた時…彼女の姿に惚れたから…
それで…『ヒロ』を作った…。
『ヒロ』からしてみれば、諸星博はご主人様だった。だからこそ、初めから。彼は殺される相手を選んでいた。
そして、この世界にさーやと死にに来た。
ラストボスを飾ったのも…特に理由はない。
審査をするまでもなく、ヒロにとって、さーやが認めた時点で既に合格だった。
◆◇◆◇
「高槻紗夜…この世界を任せた…」
俺の泣き叫ぶ姿を見て…もうすぐ死ぬにもかかわらず、彼は笑いながら、こちらへと語りかける。
「ああ…あっあ…」
「これ以上は泣くな…俺はご主人様に看取られて幸せだ。さーやとお先に行ってるよ。お前はせいぜい、彼女達と幸せになってからでいい。それと竜王様、申し訳ございません」
『よい。お前とさーやは、自身の命をもって、自分自身を認めたんだろ?ならば、我がとやかく言う問題ではない』
背後には、いつのまにか、気配すらなく竜王がいた。
時間だと言わんばかりに…ヒロの全身が白い光になって消えていく…。同時に俺に溢れんばかりの力が得られる。それよりも…彼の心はただただ、泣いていた。
「…次、さーやと俺に会う時があったら…一杯付き合え。俺達にしかわからないこともあるからな。結果的にお前に殺されるが…俺たちは全員、お前のことを家族だと思っている」
顔だけになったヒロが、俺へ語りかける…。お前らは俺の自慢の…自慢の…子だ…!!!
「ぐぅ…ッ」
抑えていた涙がまた溢れ出す。
「泣くな…笑え。そして、愛しい人を待たせてるんだろ?」
ヒロが、紗夜の背中を言葉で押す。
その時…彼の言葉には不思議と何人物の厚みを感じた。
それはひょっとして…高槻紗夜の気のせいだったのかもしれない。
しかし…高槻紗夜には、彼女の後ろで笑っているさーや…前世の両親…幼いさーや…前世の遠藤里奈の全員が俺の背中をヒロの言葉と共に押してくれた気がした。
押された背中は優しく…それでいて、早く行けと言わんばかりに、彼の背中を言葉で強く押すのだった。
——博、お前は俺の息子だ。
——博ちゃんがんばれ
——ヒロくんならいける
——さーやも応援してる
——諸星博…あとは任せた
彼らは確かにその場にいた。
ただ、見えなかぅたから、高槻紗夜は気づかなかっただけだった。
…高槻紗夜は、聖剣を握った時に…真の覚醒を果たすこととなる。




