表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/57

ー朝日未来なる人物ー

「ねぇ…そんなに仮想恋愛かそうれんあいゲームって面白いの?」


「ちょっと、無視しないでよ。あはは、だから君は、いじめられるんだよ?」


「君の愛しの彼女もされるがままの君のせいでって思うと難儀だよね?」


 朝日未来あさひみくは、彼女の人生で1番輝いていた高校生時代のとある学生をいじめていた頃の夢をよく見る。


 一般的な大人から見れば、客観的に「弱い存在を見下す行為」をしていた時が、輝いてるなんてありえないと思うかもしれない。


 しかし、思春期の学生時代は異なる。


 特に、学生は、教室内のスクールカーストなどを意識する傾向がある。


 彼女は、スクールカーストを上になりたいがために、手頃な恋愛ゲームにハマっていたオタクをいじめることで、その恩恵として学校生活を充実させたのだ。


 そんな彼女が、手を汚した中で、1番酷かった嫌がらせは、その時、ターゲットの彼女までを巻き込み、その後、彼女にもいじめを行なったことではないだろうか。


 つまり…朝日未来あさひみくにとって、いじめの被害者とは、彼女の承認欲求を満たす物と認識していたのだ。


 生物は何かの味を占めるとその味ばかりを一時的に好むことがある。


 よくある話では、熊などが、分かりやすい例に挙げられるのではないだろうか?


——人間を食べた熊は、人間の味を覚えるから気をつけろ、と


 要するに、彼女は、いじめの味を占めたのだ。


「俺をいじめるのはいい。だが、関係のないあいつを巻き込むなぁ」


 初めて、何をされても動じなかった彼が、立ち向かってきた時は、そんな彼女にとって、忘れられないうちの思い出の1つだろう。


◆◇◆◇


 朝日未来あさひみくは、若かりし頃を思い出したせいか、目覚めが悪かった。


 気分転換にと考え、ベランダで口にタバコを咥える。


「ママ…お腹すいた…」


「クソガキはさっさと学校に行くか寝てろ」


 我が子の対応に対して、と思うかもしれない。


 しかし、彼女は自身の子供を全く愛していない。


 その背景を知るには、少し時を遡る必要がある。


◆◇◆◇


 彼女は、高校を卒業し就職したものの、就職先では、うまく馴染むことができなかった。


 そのため、『因果応報』といえばそうなのだろう。


 彼女は所謂いわゆる『職場いじめ』にあってしまった。


 ちなみに、いじめの原因は、彼女と上司の反りが合わず、周囲へ悪口を吹聴したことだ。


 完全な自業自得である。


 しかし、それによりストレスを抱え込んだ彼女は、承認欲求に駆られたのかホストへと通うようになる。


 その後、どこの子かも分からない子をはらまされ、お金が尽きただけでなく、ホストからも見放された。


 更に運命の悪戯なのか…彼女の不幸は重なる。


 はらんだ子供を死産しようにも、時が遅すぎたのだ。


 そのため、彼女は、貯蓄がないにもかかわらず、産まない事を選択することが出来なかった。


 仕方がないため、親族に頼ろうとしても、既に、高校時代に()()()()()で絶縁されている。


 天涯孤独てんがいこどくとなった彼女が、弱い子供に当たるのはもはや運命だったのかもしれない。 


 いや…もしかすれば、高校生時代の時の様に味を思いだしたのかもしれない。


 彼女は、今日も代わり映えのない日々を過ごす。


 酒とタバコに入り浸り…カップラーメンを食した後、寝る…。


 当たり前だが、普通の人より不健康だった彼女の人生の終着点は、平均寿命よりも早かった。


 まず、違和感を感じたのだ。


 胸が痛い。息苦しい…最初は、ただの風邪だと錯覚した。


 だが…朝日未来は、その2ヶ月後に医者の尽力はあったものの、その甲斐なく病院で息を引き取ることになる。


 朝日未来が、入院した時に、彼女の親族が、娘を引き取ったのは不幸中の幸いだっただろう。


 なぜなら、その後の娘は、哀れな母親とは異なり、幸せな人生を歩んだのだから。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ