そんなあなただから託します
よければ、いいね、ぶくま、感想よろしくお願いします。
行かなきゃ…ふらふらとなりながらも、彼女は、己の大切な物を守るために、前へ前へと進む。
…彼女から落ちた雫達が、銀色に輝く小さな水たまりを形成していた。
『休みなさい。これ以上は君の心を壊してしまうよ…元気な君を揶揄うのが好きなんだ』
「私をここまでボロボロにした奴が言うセリフかよ…40層まで通してくれないかな?」
『39層で睡眠を取る事を条件よ。ただし、41層からは問題に答えてもらうわ』
「わかった」
流石に、涙で顔を腫らした俺を揶揄うつもりはないようだ。
——出会った当初は、嫌な奴だった。
——でも、今は不思議と、まるで子を見守る親のような優しい眼差しで見守られてる気がする。
俺は、次々に開く扉を奥へ奥へと進め、39層へ足を運んだ。
そこで寝袋を抱えて目を瞑る。
魔法を行使もしていなければ、動いたわけでもない。
しかし、気づけば、俺は、すぐに、意識を手放した。
◆◇◆◇
??????視点
「すーっ…すーっ…」
彼女は、39層へとそっと入り、寝ている紗夜の顔に手を添える。
『よく…頑張ったね!!!私の試練は、もうすぐだよ…後もう少し…もう少しだけ、頑張ろうね!!じゃないと…あんたが、いくら肉体的に強くても、精神的に脆いと、直ぐに死んじゃうんだからね…』
彼女は、実子をの成長を見守る母のような眼差しを向けながら、高槻紗夜の髪を撫でて、涙を拭った後、立ち去る。
——立ち去る時に、自分も涙を流していた事を気づかないふりをした。
◆◇◆◇
どうも、遺跡で2回も寝た高槻紗夜です。
こんなにも心が疲弊しきってるのに、何故、リラックスできているのだろう…。
——誰かに見守られていた様な…?
今は、そんな不思議な気持ちです。
40層へと足を運びます。
『お待ちしておりました。今回は、貴方に訪れる未来の映像を少しだけお見せします。これは、あくまで推測です。この通りとは行きません。ただこの通りになる可能性が高いとだけ申しておきます』
また、映像か…
そして、30層と同じような形で映像が、俺の前へ浮かび上がる。
◆◇◆◇
映像に映ったのは、幼児を大事そうに腕で抱き抱える女性だった。
???
「博ちゃぁ〜ん、またお漏らししちゃたのでちゅか〜」
目を凝らして確認すると、若かりし頃の前世の母が、俺をあやしている映像だった。
???
『ちょ…まっ…失礼しました。こちらが本題です…』
「かなり覚悟を決めて待ち構えていたのに、ミスるなァァァァァァァ!!!!後、何を見てたんじゃァァァァァァァ!!!!」
俺の悲痛な叫びを全無視し、もう1度映像が、浮かび上がった。
◆◇◆◇
それは、主人公と思しき男と5部のラストボス達が徒党を組み、学院を襲ってる姿だった。
平気で生徒を斬ることに躊躇いがない主人公…学院側も必死で応戦はするものの…回復魔法のある相手では、分が悪く、追い詰められてしまう。
何人もの犠牲になった末に、学院長が本気を出し、退けさせる事に成功するも…その犠牲者の中に沙織が含まれていた。
「…これを私に今見せたのは、変えれるかもしれないから…なんだろ?」
『ええ、その通りです。貴方が、この遺跡を突破する事ができたなら、間違いなく変えられます』
「なら、私は、進むだけだよ」
『そうですか…。では、奥へどうぞ。次は50層でお待ちしております』
俺は、その言葉と共に41層へと進む。
『高槻紗夜に転生した事に後悔は?』
『1.ある
2.ない』
即答で2を選択する。
42層
『君のお父さんとお母さんは元気?』
『1.元気
2.元気じゃない』
即答で1を選択する。
43層
『この世界が好き?』
『1.すき
2.嫌い』
即答で1を選択する。
44層
『今世の君のお父さんとお母さんは好き?』
『1.好き
2.嫌い』
即答で1を選択する
45層
『今世こそ、大事な人を守る?』
『1.守る
2.諦める』
これも即答で1だが…
46層
『今、恋してますか?』
『1.はい
2.いいえ』
なんだか…気付きたくない事実に近づいてる気がする。それでも1を選ぶ。
47層
『大切な人が増えても平等に接すると約束できますか?』
『1.はい
2.いいえ』
1を選んだ。
これもそうだ…まるで…
48層
『さーやの事は好きですか?』
『1.はい
2.いいえ』
1を選ぶ
何かを託すように…
49層
『みんなを…大事な人を守ると誓いますか?』
『1.はい
2.いいえ』
1を選ぶ
強い想いを託すように
50層
『これが最後です。高槻紗夜になれて良かったですか?』
『1.はい
2.いいえ』
だめだ…これに答えたら…何かとんでもないものを失う気がする。
『さーや大好きっ』
『…ヒロ君と結婚するなら卒業しなきゃだからね』
しかし、突如として、沙織と里奈の言葉が脳裏に浮かんだ…ここで足を止めていたらだめだ…進まなきゃ…
——だから、1を選んだ。
その瞬間…前世の俺の身体である諸星博が現れた。
『おめでとう。これで私の試練は、クリアだよっ!!私の分まで託した…よ?あぁ、そんな悲しそうな顔をしないでちょうだい!!元々あんたが、私の中に入った時点で、もう私はいないのっ!!1つの肉体に魂は、1つしか許容できないからね…。だがらぁ…ひぐっ…もうあんたを守ってあげることも支えることもできない…』
最初こそ、拍手で余裕の態度をしていた彼女だが、最後の方には大粒の涙を流していた。
俺の頬からも大量の雫が流れていた。
ここにきて何度、涙を流したのだろう。
『勘違いしないでよねっ!!あんたじゃなきゃ、私は絶対に認めなかったんだからっ!!あんたじゃなきゃ、守れないの!!だから、胸を張りなさい。最後に私も君が好きよ』
そう言って笑顔を見せ、腰を屈めて、俺の頬にキスをした後、白い光に包まれて消えた…。
その白い光が、俺の身体に入り込み…力が湧き上がる。
だが…そんな些細な事よりもさーやが完全にいなくなったことの方が辛くて…紗夜はまた、何度も泣いてしまうのだった。
その姿は、儚く…まるで、大事な母親を失ってしまった子供のような泣き方だった…。
◆◇◆◇
「逝ってしまったか……さーや…すまなかった」
腰に椅子をかけながら、その男はぽつりと呟く。
その男の目からも、大量の涙が溢れていた。




