待ってくれていた人
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21層から案内人は飽きてしまったのだろうか?
問題のクオリティーが最早、俺に関することのみになっていたり、適当だったりになってしまった。
『沙織ちゃんの好きなところは?』
『1.素直
2.可愛い
3.全部』
「3」
『わかるぅー』
これだけで扉が開いて先に進めたり、
『君は何類ですか?』
『1.哺乳類
2.人類
3.麺類』
「1.2」
『よねぇ…。ワンチャン、ワンタンメン行ってみない?ワンチャンだけに…」
「ノーチャンだな」
とのやり取りの後、軽く笑い合ったら、扉が開いて、先に進めたりでめちゃくちゃだった。
ただ…何故だろうか、話していくうちにどこか懐かしい気がするのは、俺の気のせいだろうか。
そして、肝心の30層の前に足を進めた。
心臓の動悸がする。
それでも、決意をして前へと進む。
『お待ちしておりました。挑戦者 今回は、10層と20層で決意の確認をします。今からとある映像が流れます。目を逸らさずに見てください。1度でも目を逸らせば、失格とします』
その声と共に、俺の前へ液晶が浮かび上がった。
流れてきた映像は、『遠藤里奈のその後の高校生活の映像及びその後の人生だった』
◆◇◆◇
高校時代の遠藤里奈は、黒髪のロングで、綺麗な黒の瞳をした大人しめな子だ。教室にいれば、『地味な子』に分類されるだろう。
そんな彼女との距離が縮まったのは、高校2年の春、隣同士の席になった時に、俺が退屈な授業中に、机の下へゲーム機を隠して、当時ハマっていた人気乙女ゲームをプレイていた時だ。
「それって…『パイナップル100%』じゃない!?へぇ、諸星君もやってるんだねっ!!ちなみに、私の推しは『東條唯さん』だよっ!!」
「へ?遠藤さん…?いつもは、そんなに饒舌ではなかったような…」
そう、彼女は別に吃るわけではないが、いつも、教室では、自信がなさそうに話す子である。
「そこっ!!授業中だぞ…!!廊下に出とけー」
俺達は先生に怒られ、素直に従い廊下へと出る。
「ご、ごめんね…私、そのゲーム好きなんだっ!!だからつい…テンションあがっちゃった…」
——オタクあるあるの現象だ。
人間は、詳しく知ってることや得意なことを他者に褒めてもらいたい時に『承認欲求』が働く事がある。
今回が、典型的なその例だろう。
「構わないよ。ちなみに僕は、西野翼ちゃん派かな。あのショートで少しボーイッシュな所が好みなんだよなぁ〜」
「おおっ…翼ちゃんが、1番人気よねぇ。私も好きだけど、1番は、唯ちゃんだなぁ」
「唯ちゃんもいいよね。わかる〜。他には、何かゲームやったりするの?」
「う、うん…やってるよ?もしよければ、連絡先交換しない?」
「僕でよければ」
これが、後の俺の彼女となる遠藤里奈との出会いだった。
その後は、ラウンでやり取りを始め、気づけば、カフェで密会を重ねることとなる。
お互いの所有しているソフトで気になるタイトルを貸しあったり、難しい選択肢などがあれば、教え合いっこしたり、時に考えたりなど、楽しい時を過ごした。
◆◇◆◇
そして、高校2年の夏休みの頃に、彼女を星の観測デートへと誘う事に成功した。
勿論、場所は、星がよく見える絶景スポットである。
チュイッターを利用して、一生懸命穴場を調べ上げたのだ。
「ヒロ君が星とかどうしたの?」
「似合わなくて悪かったねっ!!たまにだけど、星が見たくなる時もあるんだよ」
そんな軽口を叩きながら、頂上へと登る。
頂上を登った先に、僕らを待っていた景色は綺麗な星に彩られていた夜空だった。
告白するには、これ以上ない最高のロケーションだ。
「わぁ…本当に綺麗だね」
彼女が、夜空を眺めて、目を輝かせていた。そんな彼女の横顔を見つめ、恋愛経験の乏しかった俺は、安直に『結婚したい』そんな気持ちに駆り立てられていた。
「好きです…!!俺と結婚してください…!!」
「え?結婚?う、うーん。卒業してからなら…考えてあげる…?交際は…ヒロ君ならいいよ?」
せっかくの告白なのに、自分の欲望が口から溢れてしまい、台無しだった。
それでも、成功して思わず、ガッツポーズした。
「これから、彼女としてよろしく…ね?」
星を見た後、こちらを振り返り笑顔を見せた彼女は満面の星よりも綺麗だった。
◆◇◆◇
時を少し戻そう。
俺が引きこもった後は、幸いにも里奈は、強姦やレイプは合わなかったものの…精神的にくる嫌がらせをされ続けていた。
彼女が隠していた乙女ゲーマーだってことを学校中にばらされたり、陰口から始まり、最後には、すれ違うだけで、強く睨まれたり舌打ちされるようになり、彼女の友達だった人は、全員、彼女から距離を置いて行った。
それでも、彼女は負けずに、どんな事があっても、毎日、学校へと通い続けていた。
『…ヒロ君と結婚するなら卒業しなきゃだからね』
音声には、この一言だけ彼女の声が残っていた。
そして、高校卒業をした彼女は、無事広告業者へと就職を果たす。
しかし、結婚をしなかった里奈への親からの愚痴にも、周りからの婚約の薦めも、言葉を濁すことで、上手に回避をし、男を誰1人として寄せ付けず、その生涯を独身で終えて、映像は切れた。
◆◇◆◇
映像を見た高槻紗夜のその後は、四肢を床につけ大きな声で泣き叫んでいた。
それもそのはずだ…。
——彼女は彼女なりにずっと待っていたのだ。
未練を断ち切ったはずの高槻紗夜にとって、先程の決意を鈍らせる事はないだろう。
その証拠にその後、彼女は約1時間以上も『里奈ぁ…ごめん…ごめんなぁ』と泣きながら、謝り続けたのだ。
——けれども、高槻紗夜は、遠藤利奈の映像を逸らさずにずっと目視していたのだ。
彼女もこの世界に来て、精神的に成長しているのかもしれない。




