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時計仕掛けの魔術師  作者: 八月十五
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終章 真実は影にあり

 寂れたバーに一人の老人が座り、酒を飲んでいた。

「待たせたな、ワイズマン」

「構わんよ、久々に弟子と息子に会ったのだろう?」

 バーに想がやってきて、ワイズマンと呼ばれた老人の隣のカウンターへ座る。

「元気そうだったよ」

 想の答えにワイズマンは爽快に笑う。

「弟子には皮肉を言い、息子とは一言も交わしておらん癖に、よく言うわい」

 それを聞いて、ポケットから煙草を出そうとした想の手が止まる。

「見てたのか」

「当然よ。魔術師教会の危機、創設者であるこの儂が見届けんでは済まんじゃろう?」

酒を一口飲んで唇を潤し、ワイズマンは真剣な口調で想に尋ねる。

「で、どうじゃった? お主の心臓の様子は?」

 煙草に火をつけながら想は言う。

「ああ、あのバカ息子、我が物顔で使ってやがったよ」

「カカカッ! そりゃあそうじゃろう、自分のものだと思っておるのじゃから」

 また酒を一口飲み、真剣な口調に切り替えてワイズマンは聞く。

「本当に、何も説明しなくてよいのか? このままでは恨まれ損じゃぞ」

 煙草の煙を吸い込み、ゆっくりと吐き出しながら想は言う。

「別に感謝される為にやったわけじゃないし、親が子を助けるのは当たり前だろう?」

 想の答えに満足したのか、ワイズマンは飲みかけの酒のグラスをを想に譲り、紙幣を何枚か置くと、身体がピキピキと石になり、やがて砕け散った。

 想はグラスに口をつけ、酒を飲む。

「あんたも大概だよ。こんなどこの馬の骨とも知らぬおっさんに賢者の石を渡しちまうんだからな」

 想はかつて自身の心臓があった場所に手を当て、呟くとグラスの口をつける。

「いい酒飲んでんじゃねえか、ワイズマン」


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