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第47話 破天荒な作戦

「まったく、キリがないね」

「──ッ! ですね!」


 エミリアは襲い来る敵の頭を矢で射抜きながら俺の言葉にそう答える。矢弾も回収しながら使っているとは徐々に底をつき始め、かつスタミナにも陰りが見え始めたのか息が上がってきている。


 俺の方はまだまだ余力はあるとはいえ、ずっとこのまま新しく生み出され続ける雑魚を相手にしていては身が持たない。


(とはいえ──)


 視線の先。そこに見える例の大樹モドキと自身との間にはうじゃうじゃとお仲間が溢れている。


(大火力の魔法を放つには味方が多すぎるな)


 あの大樹とその周辺に群がる怪物に向けて一発『四元魔法』でも撃ち込んでやろうかと考えたが、その射線上では今も多くの騎士たちが天使モドキと戦いを続けていた。


 既に戦場のような様相と化したこの大広場は、敵味方入り乱れ大混乱に陥っていた。さらに無限かと疑いたくなるほどに、あの白い大樹は今も続々と怪物を生み出し続けている。今は何とか持ちこたえている騎士たちでも、このままでは長くは持たないだろう。


 そんな状況ではとても俺の話を聞いている余裕はないだろうし、よしんば耳は貸してくれたとして、何者かも分からない俺が「退避してくれ!」と叫んだところでまず受け入れられることはないだろう。


(とにかくアレに近づくことが先決……)


 となればココは全力の一点突破しか方法はない。俺はエミリアにそう告げ、彼女も緊張した面持ちで頷く。さてそれじゃあ始めようかと、俺たちが武器を構えたその時だった。


「おらあああああああああ!」


 後方から聞き覚えのある男の声が聞こえる。そして──。


「Gugaaaaaaaaaaa!?」


 その声に続くようにして、俺たちの頭上を通って敵が吹っ飛んでいくのが見えた。


「なんですか!?」


 驚いたエミリアと共に後ろを振り向くと、一人の男が大斧を振り回しながら怪物たちを蹴散らしてこちらへと向かってきた。


 その男は、昨日ギルドで出会った金級冒険者のデックス=ルーダルカ、その人だった。


「よおカイル! エミリア! 昨日ぶりだな!」

「デックスさん!」


 怪物の群れの中を突破してきたらしいデックスの身体は、全身が傷に覆われていたがそんなことを感じさせないだけの活力を溢れさせていた。

 そうしてこちらへと駆け寄ってきたデックスと俺たちは、すぐに互いに背中合わせとなって死角を無くすような陣形を取る。


「何故ここに?」

「何故ってそりゃあ、お前の可愛い妹さんに頼まれちまったからにきまってるじゃねぇか」

「! そうだったんですね。ありがたいです……あとミリスはあげませんからね」

「かっはっは! この状況でそんな冗談言える余裕あるならまだ大丈夫だな!」


 俺は内心家族が無事逃げていることに安堵しつつ、未だ騎士たちの怒号と怪物の唸り声が響き渡る戦場の真っただ中でそんなことを言い合った。


「二人とも! そんなこと言ってる場合ですか!」


 そんな俺らの様子に、エミリアも思わず声を上げる。


「いや、こういう時こそ態度だけでも余裕をもたないとね」

「そうだぜ嬢ちゃん。人間余裕を無くしたらしまいだ。それに何事も形からっていうだろ? 余裕な風を装ってりゃ心も何となく余裕を感じるもんなんだよ」

「まぁ、程よい緊張感もまた大切だけどね」

「ちげぇねえな!」

「そんな風に考えてるの絶対お二人だけだと思いますけど……」


 じと目でこちらを見つめるエミリアの視線を交わしながら、デックスは それで? と口を開く。


「今回の元凶は……なるほど間近で見ると益々気味がわりぃなこりゃ」

「えぇ……。あくまで推測の域を出ませんが、あの大樹モドキの中心あたりに埋め込まれている人間……あれがあの怪物の核なんじゃないかと考えています」

「なるほど道理だな。どんな意味不明の怪物でもその心臓……核となる部分があるとするならそこを叩くのが一番だ。まぁ何であれまずはアイツに近づかなきゃならねぇわけだ」

「話が早くて助かります」


 考え込むデックスだったが、はるか先にそびえたつ大樹と自らの武器とを交互に見比べ、何かを思いついたのか口を開いた。


「おい二人とも、俺に考えがある。いいか──……」


 そうして俺たちは、デックスが話始めたその作戦を黙って聞くことにした。


「それはまた随分と豪快な作戦ですね」


 それから少しして一通り説明を終えたデックスに対し、俺は苦笑しながら言う。エミリアもそんなこと出来るのか? といった表情で彼の方を見つめていた。


「だがどのみち、このままチマチマと雑魚どもを潰していってもジリ貧になるだけだろ?」

「間違いなく」


 今の戦力であれば頑張れば大樹までの道を切り開けるかもしれないが、時間がかかる。状況が刻一刻と変わっている現状を考えると考え無しの特攻は避けたかった。

 とはいえ正直デックスの作戦は普通に考えれば馬鹿げてるといえるようなものだった。少なくとも昔の俺であればそう断じていただろう。

 だが──。


(そんな馬鹿げたことを実際に可能にする人間を何人も知っているからな)


 主にジルとか師匠ジルとか阿呆ジルとかがそれにあたるわけだが、今はいいだろう。


 俺は覚悟を決め、デックスの案にのることにした。


「やりましょう」

「いい返事だぜ! よし、そうと決まれば……」


 そう言って武器を担ぎなおすデックス。俺たちもそれに合わせて武器を構える。


「遅れんじゃねぇぞ!」

「勿論! ……いきます!」

「はい!」「おう!」


 そうして俺たちは一斉に走り出した。

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