土日1:PBが勧誘した。
土曜日。
今日と明日、ソレイユはログインしない。親に内緒でゲームをやっているからだ。
連盟『のんびりひだまり』は、まだ連盟ランク0。メンバー5人でランクアップするから、あと2人メンバーが必要だ。
パンダバナナ(PB:PandaBanana)は、朝から新メンバーの勧誘をしていた。個人チャットの相手は、ひよこぷただ。
パンダバナナと同じ頃にゲームを始め、最初に入った連盟で仲良くなった。
「新しい連盟作ったし、来てよwww」
「またかよ」
「良いじゃん!入ってよwww」
「なんで?」
「メンバー募集中だからさwwwみんな中学生だしwww」
「でもさぁ」
「大丈夫だってwww」
パンダバナナは必死だった。
ソレイユのいない土日は、アレ(→泡沫。)と2人になってしまう。アレは少しはまともに話せることはわかったが、やっぱり意味不明な発言が多く、パンダバナナには、ちゃんと話せる仲間が必要だった。
「頼むからwww」
「今の連盟」
「…抜けにくいんか?」
「楽なんだ」
レイドモンスターの討伐報酬は、連盟員全員が受け取ることができる。大きな連盟になると、他のメンバーの討伐した報酬だけでかなり稼ぐことができる。
ひよこぷたが所属する連盟『桃源郷』は、最初期からある連盟で、4大連盟のひとつである。
同時期に始めた2人だが、連盟の大きさもあって、ひよこぷたの方がレベルが高くなっていた。
「連盟チャット楽しいよ。ワールドチャットより盛り上がるwww」
「わかった」
『桃源郷』の連盟チャットは、課金勢が戦術や強化の話ばかりしていて、ひよこぷたが面白いと思ったことは一度もない。
また、レベル46になってレベルアップのペースが止まったこともあり、新しい刺激が欲しいと思っていたところだった。
「参加する」
「オッケー!!!www」
「連チャで」
「ありがとう!www」
「あいさつ」
「本当に助かったよwww」
「してくる」
少しして、連盟アイコンが光る。
『ひよこぷたが「のんびりひだまり」に参加しました。』
あと1人。
午後まで待ってから個人チャットを開く。
「コッコさん、こんにちはwww」
「あら、パンダさん。個チャなんて、お久しぶり~!」
コッコは、パンダバナナたちがパステルミリタリーを始めた時、ゲームの進め方や攻略法について教えてくれた人だ。
昨日、自分たち中学生だけでは不安なので、そういう優しい大人も入れようという話になったのだ。
「突然ですみません。新しい連盟を作ったんで、入ってくれませんか?」
「お~前~も~か~(笑)」
「え?」
「中学生だけの連盟でしょ~。」
「そうですwww」
なんでそこまで知ってるのか。
「昨晩からウタさんにも勧誘されてるんよ~。」
泡沫。に先を越されていた。コッコと泡沫。は、ワールドチャットで仲良くしている所をよく見る。
「ぜひ来て下さい」
「やめとくわ~(笑)。未成年の中に、私みたいな悪い大人が入ったら、すぐ***して、逮捕されるじゃん(笑)」
コッコは下ネタ発言が多いので、よく「***」で伏字にされる。ただ伏字にされても、なんとなく意味は通じる。
コッコは自分を悪い大人だと言うが、パンダバナナはそう思っていない。本気で***をするつもりなら、こんな事言わずに連盟に喜んで入るだろう。
「それに、下手に大人が入ると、やりたい事できなくて、つまんなくなるでしょ(笑)」
多分、こっちが本音だ。自分が邪魔になると思っているみたいだ。
「私たちがムチャクチャしたら、止める人が必要ですwww」
「大丈夫、パンダさんなら無茶はしないわ(笑)
まあ、ゲームだし、ちょっとくらい無茶しても良いのよ。」
勧誘方法を変える。
「盟主が始めたばかりの新人なんで、連盟について教えてください」
「それこそ、パンダさんの方が詳しいでしょ。わかんない事は、個チャで教えてあ・げ・る(笑)」
手ごわい。
「連盟に強い人がいてくれると、攻撃受けにくいし、反撃も心強いし!」
「それは確かにそうね。」
「じゃあ!」
「じゃあ、私よりもっと強い人誘いなさい。」
ダメだ。パンダバナナは諦めた。
「気が向いたら、連盟に遊びに行くわ~」
「待ってますwww」
連盟チャットに切り替える。
ひよこぷたが、パンダバナナの勧誘の成果を待っていた。
ひよこぷた「どんな?」
パンダバナナ「ダメwwwもっと強い人探せってwww」
ひよこぷた「残念だな」
2人で、自分たちの知ってる、話のわかる大人を考える。
ひよこぷた「走体は?」
パンダバナナ「『ゆきのじょおう』でメンバー募集してるような人が、他の連盟にくるわけないじゃんwww」
ひよこぷた「ザチエは」
パンダバナナ「ZATIEさんか。優しそうだけど、あんまり話したことないwww」
一時間ほど、あれこれ話していると、泡沫。が現れた。
泡沫。「こんちは~~~~~~~」
ひよこぷた「よろしく」
泡沫。「いらっしゃいませませ。」
パンダバナナ「1人は勧誘成功した。あと1人だなwww」
泡沫。「もう1人入るよ!」
パンダバナナ「え?」
泡沫。が誘う奴だ。どんな変人が来るのかドキドキする。
連盟アイコンが光った。パンダバナナは恐る恐るアイコンをクリックした。
『コッコが「のんびりひだまり」に参加しました。』
パンダバナナ「え?コッコさんwww」
泡沫。「ねーさん!!」
コッコ「来ちゃった(てへぺろ)」
パンダバナナ「あんなに断ったのに?」
コッコ「うん。パンダさん、ごめんね。」
パンダバナナ「いや、嬉しいですけどwwwなんで?」
自分の勧誘は断って、泡沫。の勧誘には乗ってきたのだ。よっぽどの理由があるに違いない。
コッコ「ウタさんにね…愛してるから来てって言われたの(笑)」
泡沫。「愛してるぅぅぅぅううううう!」
コッコ「私もよ。」
パンダバナナは思った。この人は、悪い大人ではないが、ダメな大人だ。ちょっと不安になった。が、とりあえず5人揃った。『のんびりひだまり』の連盟ランクは1になった。