6日目:JCの仲間が増えた。
【ゲーム6日目】
ママは仕事に出掛ける前、玄関で靴を履きながら、いつものように口うるさい。
「陽子、動画ばっかり見てないで、ちゃんと勉強もしてる?」
「してるよ。塾の配信動画だって見てるし。」
嘘である。
最低限のプリントやワークブックはやっているが、残りの時間は全てゲームだ。最近はネコちゃん動画すら見ていない。
「休みのこの時期に、勉強したかどうかで成績に差が付くんだからね。」
「わかってるって。」
嘘である。
陽子は、勉強なんて誰もやってないと考えている。こんな時期に勉強する人は、元からデキる人だろう。今さら陽子が頑張ったところで追い付けるはずがない。
「行ってきます。」
「ママ、マスクは?」
「忘れるところだった!」
「行ってらっしゃい。」
陽子は、玄関の鍵を閉め、いつものようにPCを起動する。待っている間、鼻歌でパステルミリタリーのBGMを歌う。この曲はすっかり覚えてしまった。
『ようこそ!パステルミリタリーへ!』
今日もソレイユはお家に帰ってきた。
(燃やされてない!やっぱり、連盟に入ると攻撃されにくいんだ。)
連盟に入っている相手のお家を攻撃すると、その連盟全員から総攻撃を受けるかもしれない。その中に自分より強い者が居ようなら、自分の妖精が全滅する可能性もある。
だから、連盟に加入しているだけで抑止力が働く。
ログインボーナスの受け取りや1日1回の無料ガチャを回すなど、まずやっておく作業には慣れてきた。
作業が終わると、チャット画面を開き、個チャ画面からフレンドを確認する。パンダバナナはログイン中だ。
「パンダさん、おはよー」
「おはよう、ソレイユ。連チャがえらいことになっちょるねwww」
「連チャ?」
「連盟チャットのこと。まだ見てないのかwww」
パンダバナナに言われて、ソレイユはチャットのタブを切り替えた。
泡沫。「ぃゃっほぉぉぉぉおおおお!」
泡沫。「俺はしぬっ!」
泡沫。「wwwうぇwwwwwwwww」
なんだこれは。連盟チャットのログが、泡沫。の発言で埋められている。
(ワールドチャットでカオスを作り出していた人だ!なんで、うちの連盟にいるの!?)
ソレイユはパンダバナナのチャット画面に戻す。
「パンダさん!なんで、別の人がいるの?」
「加入制限の設定してないでしょwww誰でも入れるよ」
「マジか…。」
「メンバー増えるとできることも増えるからねwww」
「でもあの人じゃあ…」
「盟主のソレイユなら、アレを追放できるけど。」
「追放って…恨まれたりしないかしら?」
「どうだろうね、アレってムチャクチャな発言ばっかりだし」
パンダバナナが泡沫。をアレと呼ぶのは、人間だと思ってないからだ。
「とりあえず、話してみる。」
「盟主、頑張ってwww」
チャット画面を切り替える。泡沫。の不規則発言が目に入り、ソレイユはため息がでた。
やっぱり挨拶からと、思い切って書き込む。
ソレイユ「こんにちは。」
泡沫。「盟主!おはござます!」
ちゃんと返事してくれた。泡沫。がワールドチャットで一応会話はしていた事を思い出した。
ソレイユ「名前、なんて読むんですか?」
泡沫。「うたかた!イケボの歌い手さんだよ、知ってるぅ?」
ソレイユ「イケボ?」
泡沫。「イケメンボイスだよ。良い歌いっぱい!!」
ソレイユ「ごめんなさい。知らないです。」
泡沫。「仕方ないねーwwwうぇwwいっかい聞いてみて」
ソレイユ「興味あります。また今度調べてみます。」
嘘である。
陽子は歌い手動画に興味なんてない。とりあえず良い顔をしておこうと思ったのだ。早く本題に入らなくては。
ソレイユ「うたかたさん、質問していい?」
泡沫。「俺のことウタって呼んでいいよ~。ウタウタウタ」
ソレイユ「ウタさん、なんで、この連盟に入ったの?」
泡沫。「同い年の人の連盟だから、おーえん!うぇ~い。」
この人も中1なのか。
応援っていうか、邪魔してない?
助けてパンダさん。
泡沫。「メンバーいっぱい増やそー」
パンダバナナ「連盟メンバーが増えるのはいいけど、うるさいのは困るwww」
パンダバナナの助けが入る。やっぱりパンダバナナは頼りになる。
泡沫。「連チャ盛り上げないと、メンバー離れるよ。」
パンダバナナ「そりゃそうだ。けどwww」
泡沫。「他の人も誘ってくる!」
(あれ?この人はこの人なりに、私たちのためにと思ってやってるんだ。)
ソレイユの泡沫。への見方が変わる。やり方は独特で、多分間違えてる。だけど、連盟『のんびりひだまり』を応援しようとしてくれるのは本当らしい。
ソレイユ「誘うのちょっと待って。」
泡沫。「なんで?なんで?なんで~?」
ソレイユ「『のんびりひだまり』をどんな連盟にしたいか、3人で決めてから、誘おうよ。」
泡沫。「わかった!」
パンダバナナからと個チャがきた。泡沫。からは見えない秘密回線の会話ができる。
「アレを、うちに入れるの!?」
「今は、ちゃんと話は聞いてくれてるし。」
「大丈夫かなぁwww」
「ダメなら、出てってもらう!」
「ソレイユがそこまで言うなら、いいよwww」
連盟チャットに戻す。
泡沫。は会話の空き時間が怖いのか、返事がないとみるや意味不明な書き込みを始めていた。
泡沫。「ハハハハハハハうほっ」
ソレイユ「ウタさん、お願いがあります。」
泡沫。「!何なになにナニナニ?」
ソレイユ「これから、どんな連盟にするか会議するから、大事なことだけ話してね。」
パンダバナナ「チャットが流れて、何て言ってたか見れなくなるしwww」
泡沫。「了解!マジメモード!」
この後、泡沫。は別人のように大人しくしていた。きちんと会話できることに、パンダバナナが驚くほどだった。
会議は、何度か脱線しながらも、連盟の方向性はなんとか決まった。
中1トリオの連盟『のんびりひだまり』が動きはじめる。
お楽しみはまた明日。
プレイヤー情報
パンダバナナ(Lv39)
連盟:のんびりひだまり(連盟ランク0)
戦力:ノーム32人、ニンフ39人、シルフ22人、ウンディーネ5人、コロボックル2人、ポセイドン1人
課金:無課金
端末:デスクトップPC
本名:ひろみ
年齢:中1
一人称:私
住所:千葉
好きな食物:バナナ
好きな動物:パンダ
ログイン時間帯:8:00~18:00
備考:水部隊推し
英語教室へ通っている。