4日目:JCが連盟を作った。
【ゲーム4日目】
昨日の特訓(?)のおかげでソレイユのレベルは24になっていた。
風の妖精「シルフ」も召喚できるようになり、ソレイユの「お家」は賑やかになった。
ノームはブランコで遊び、ニンフは水浴び、シルフは立木の間を飛び回っている。
(か、かわいい。・・・この庭、もっと広くしたいな。)
パンダバナナからは庭の拡張方法も聞いていた。そして、もう少しレベルが上がってからの方が良いとも教えてもらった。
それでも、庭を広くしたい!
相談したいが、パンダバナナはまだログインしていないようだ。
(どうしよう。勝手にしてもいいかな?)
とりあえず、ソレイユは庭の拡張に必要な資材を集めるために、雑魚モンスターのコボルドとネレイドを狩っていた
妖精やモンスターには属性があり、大地と水と風でじゃんけんになっている。水属性であるネレイドに対しては、大地の妖精ノームでは不利だが、風の妖精シルフで戦えば少ない数でも勝てる。
ソレイユは、ただかわいいからという理由だけでなく、もっとシルフを召喚するための場所が必要で、庭の拡張を急いでいたのだ。
(パンダさん、まだ来ないな~)
ソレイユは思い立って、ワールドチャットを覗いた。
そこは、やっぱりカオスだった。
走体「『ゆきのじょおう』では、メンバー募集してます。レイドモンスター討伐を頑張る連盟です。」
泡沫。「ケケケケケケケケケケケケケケケケケケケ」
RainyMan「good night.everyone!」
もく覇王「誰か、今晩麻雀やらない?」
走体「bye-bye RainyMan.」
泡沫。「さいなら~」
コッコ「アタシ、麻雀ヤる!」
大人(と思われる人)がいっぱいいる。平日の午前中に。
パパもママもこの時間はお仕事してるのに。
(この人達は、いったい何をしている人なんだろう。)
ソレイユは、ワールドチャットのやりとりをしばらく眺めていた。そして、あんまり深く考えてはいけないと思った。
(パンダさんとも、ワールドチャットで知り合ったんだし、何とかなる!)
意を決して、ワールドチャットに書き込んだ。
ソレイユ「おはようございます。」
コッコ「おはよう~」
泡沫。「おはござます!」
やっぱり返事が返ってくるのは嬉しい。
ソレイユ「質問してもいいですか?」
コッコ「何でもどうぞ。答えられるかはわかんないけど(笑)」
泡沫。「ねー」
ソレイユ「庭を広げたいんですが、もっとレベル上げてからのが良いですか?」
コッコ「ちょっと待ってね(笑)」
泡沫。「ねえさん。今、必死に調べてるね~~」
コッコ「うっさい(笑)」
走体「レベル低いと、編成できる妖精の数も少ないから、庭広げて妖精増やしても、攻撃力が変わらないんです。」
良かった。詳しい人がいた。
ソレイユ「そうなんですね。わかりました。」
コッコ「どうしよ。アタシ、妖精ちゃん可愛いから、めっちゃ広げちゃったわ(笑)」
良かった。自分と同じ考えの人もいた。
走体「遊び方は自由だし、レベルが上がってくれば一緒です。」
コッコ「自分の好きなようにってことね(笑)」
走体「ソレイユさん、うちの連盟来ませんか?連盟入っていれば攻撃もされにくいし、早くレベルアップできますよ。」
コッコ「ナンパ(笑)」
(連盟も、面白いのかな。)
連盟のお誘いにソレイユは少し心動いた。しかし、まだ悩んでいた。
ソレイユ「もう少し考えます。ありがとうございました。」
走体「もしよかったら、個チャしてください。」
泡沫。「飯ターイム!ねえさんさよなら」
コッコ「ウタさん、またね。」
(私も御飯食べなきゃ。)
ソレイユから陽子に戻る。
陽子はPCを付けっぱなしにして、冷蔵庫に向かう。今日のお昼ご飯はスパゲティとサラダ。ミートソースをレンジで温めて、ママが準備してくれた麺にかけるだけ。
スパゲティもサラダもすぐに食べ終わり、皿を流し台に片付けると、すぐさまPCに向かう。
(やっぱり、庭を広げよう!)
「お家」に戻って来ると、妖精たちがみな怪我をしていた。
前も見た光景・・・。
「燃やされてる。」
まさか昼ご飯食べてる間にやられるとは思っても見なかった。とりあえず、治療室で妖精たちを回復させる。
昨日と同じように通知アイコンから、誰に燃やされたか確認する。
『戦闘報告:今日13:28 敗北 CutieC(Lv46)』
「またこの人か~。狙われてるのかな?」
ただ、今回の戦闘では、相手の妖精を1体だけ倒していた。やられっぱなしではなかった。一矢報いたのだ。
「よく頑張った、私のノームちゃん。」
不条理に迫り来る強敵に立ち向かい、必死に戦った妖精たちを想像して、ソレイユは胸が熱くなっていた。
「ニンフちゃんもシルフちゃんも、ありがとうね。」
ソレイユは回復して無邪気に遊んでいる妖精たちにお礼を言った。
気づくとミッションのアイコンが光っている。
『☆チャレンジミッションクリア☆他プレイヤーとの戦闘で、相手の妖精1体以上を倒す:経験値+1280』
『レベル25おめでとう』
派手なエフェクトとともに、レベルアップのメッセージが流れる。
妖精たちの頑張りのおかげで、レベルアップできたことに、ソレイユは感動すら覚えた。
『機能開放:自分の連盟を設立できます。』
「へぇ、連盟作れるんだ。やってみようかな。」
感動に任せた勢いで、ソレイユは突き進む。連盟に入っていれば攻撃されにくいという言葉も後押しした。
連盟のアイコンをクリックすると、いつもの【加入する連盟を探す】ボタンの下に【自分の連盟を作る】ボタンができていた。
迷わずポチッ。
『連盟設立しますか?』
【はい】【いいえ】
「もちろん【はい】で!」
『連盟の名前は?』
「『のんびりひだまり』にしよ。」
ソレイユはとうとう自分で連盟を立ち上げた。
それから庭を広げたり、連盟の機能について調べていたりするうちに、あっという間に時間が過ぎてしまった。
今日はここまで、また明日。