10日目:JCが姉になった。
【ゲーム10日目】
今日の日替わりミッションは、レイドモンスター討伐だ。
レイドモンスターとは、連盟メンバーそれぞれの部隊を集結して倒す強いモンスターだ。逆に、連盟の仲間がいない時には一人で戦うことすらできない。
ソレイユは朝イチにログインして待っていた。
早くみんなと遊びたい!の一心で。
コッコ「おはよ~!!」
ソレイユ「おはようございます。今日は早いですね」
コッコのログイン時間は毎日バラバラだ。が、今日みたいな朝の時間は珍しい。
コッコ「アレ?まだ私たちだけ~?」
ソレイユ「そうみたいです」
早速、ソレイユたちはレイドモンスターの討伐を始める。レベルの高いコッコがいるので、ソレイユはただついて行くだけで良かった。
ソレイユは、ふと気になって個チャで質問をする。
「コッコさん、ちょっと聞いても良いですか?」
「なーにー?わざわざ個チャで~」
「朝早いですけどお仕事とか大丈夫なんですか?」
このゲームで遊ぶ大人ってのは、一体どんなことをしている人なのか。それが気になることの一つ目だった。
「プライベートな事聞くときに個チャ使うってのは、ちゃんと気が使えてて、えらいわ~!」
「そうですか?」
「ウタさんは、気にせずにワールドチャットで聞いて来たもんねwww」
確かに泡沫。なら、そんなこと気にしないだろう。
「今、仕事はお休みしてるから、時間はへーきだよ~」
「病気とかですか?」
「ちょっと違うわ(笑)サンキューね。」
あんまり深く聞かない方が良いことなのかもと思い、次の気になることを聞く。
「なんで私たちの連盟に入ってくれたんですか?」
「ウタさんが、誘ってくれたからね~」
コッコと泡沫。が、とても仲が良いのは、チャットを見ていてよくわかる。うらやましいくらいだ。
「昨日みんなが燃やされた時にもコッコさんが居てくれて助かりました」
「みんなでやり返すの、めっちゃ楽しかった~」
「私もですwww」
こういう、私たちと友達になって楽しめる大人って素敵だなと思う。
「どうしたら良いか分からない時にとっても頼りになります」
「私みたいなダメな大人を、頼らないほうが良いわよ(笑)」
「ダメだなんて、とんでもない!」
ソレイユは強く否定した。
「コッコさんは素敵です!」
「ありがとう~」
「あの…私もお姉さんって呼んでも良いですか?」
実は、これが一番言いたかったことだ。
陽子は一人っ子。兄弟に憧れていた。こんな人が姉だったらなんて素晴らしいんだろう。
「良いよ~。好きに呼んで(笑)」
「お姉さん!!」
ソレイユはニヤけていた。
「お姉さん!」
「な~に、ソレイユちゃん?」
ニヤけまくっていた。
「このゲームを始めてまだ2週間もたっていない初心者の私が盟主で中学生ばっかりの連盟だけど『のんびりひだまり』にお姉さんが居てくれて本当に良かった!ありがとうございます!」
ソレイユは一気に書いて送信した。お姉さんができた喜びと感謝を伝えるのに、まだまだ言葉が足りないくらいだと思った。
「ソレイユちゃんは本当に中学生かしら~?(笑)」
「え?中学生ですよ?」
「ウタさんと比べると、きちんとしてるなって(笑)」
「ありがとうございます!」
ソレイユは、お姉さんに誉めてもらえて嬉しかった。そして自分が年齢以上に大人びて見られたということに、またニヤけた。
***
10時前には、みんなが揃う。
今日のソレイユは張り切っていた。コッコお姉さんに、きちんとしてる所をもっと見てもらいたいのだ。
ソレイユ「じゃあ次のレイドモンスター行こう!」
ひよこぷた「オッケー」
パンダバナナ「またかwww」
泡沫。「オラオラオラオラ!もっと討伐とーばつ!」
午前中だけで、かなりの数のレイドモンスターを倒した。
今日のミッションの討伐ランキングで、『のんびりひだまり』のメンバーは五人とも100位以内に入った。
きっと夜になったらランク外に落ちてしまうのだろう。でも、中学生達の今のテンションをあげるには十分だった。
泡沫。「ランキング入ったの初めてだ!」
パンダバナナ「集中してあれだけ狩ればなwww」
ソレイユ「みんなありがとうね」
コッコ「じゃあ、お昼だから落ちるね~」
ひよこぷた「お疲れ様」
コッコが一旦離脱する。
コッコが抜けると、強いレイドモンスターとは戦えないので、低レベルのレイドモンスターに目標を変えなければならない。
ソレイユ「次、こいつでどうかな?」
パンダバナナ「そうだね、そのレベルなら倒せると思うwww」
泡沫。「じゃ、行こっかーーーーーーーー」
パンダバナナ「私、魔力ゼロwwwもう集結かけられない」
ひよこぷた「俺がやる」
メンバーが交代で集結をかけ、レイドモンスターを討伐していく。
慣れてしまえば単純作業なのだが、ソレイユは飽きなかった。みんなで話しながら、同じことして遊んでるのが楽しかった。
学校の友達と遊べなくなってもうすぐ一ヶ月になる。夏休みでもないのに、何日も一人で留守番することになるなんて思ってもみなかった。
このゲームをしていれば、一人の寂しさなんて感じない。
ソレイユ「私も魔力使い果たしちゃった」
泡沫。「次は俺が集結かける!!どこのを狙う?」
そんなこんなで数体のレイドモンスターを倒した。
気が付くと、ミッションアイコンが光っている。
『☆連盟ミッションクリア☆連盟でレイドモンスター100体を討伐』
『連盟メンバー全員、レイドモンスターへのダメージ+10%』
ひよこぷた「やった!」
パンダバナナ「これで、もう少し強いレイドが倒せるwww」
ソレイユ「みんな頑張ったもんね!」
みんなもソレイユと一緒に遊ぶのを楽しんでいた。
同じ年ということもあって、ソレイユとは気兼ねなく話せるのが良いのだ。
パンダバナナ「なんか、ソレイユって、姉さんって感じだなwww」
パンダバナナの素直な感想だった。初心者なのに盟主をこなしているソレイユを、少し年上に感じたのだ。
他のみんなも同じだった。
ひよこぷた「わかりみ」
ソレイユ「なんで?なんで?」
パンダバナナ「なんとなくwww」
ソレイユは困惑している。
泡沫。「でも、姉さんは、ねえさんだけだ!!」
ソレイユは混乱した。
パンダバナナ「確かに泡沫にとっちゃ、コッコさんが『ねえさん』だな。じゃあソレイユは…姉貴?」
ひよこぷた「姉貴ww」
(もしかして、私いじられている?)
ソレイユ「ちょっと姉貴なんてやめてよ~」
パンダバナナ「確かに、姉貴って感じでもないなwww」
ひよこぷた「姉ちゃん」
パンダバナナ「それだwww」
泡沫。「姉ちゃんならOKぇ!」
もう誰も止める者は居ない。
ひよこぷた「姉ちゃん」
パンダバナナ「姉ちゃん」
泡沫。「姉ちゃん」
ソレイユ「もう仕方ないなぁwww」
お姉さんができたらと思ったら、3人の中学生の姉ちゃんにもなってしまった。
(なんでこんなことに…)
でも、まんざらでもなかった。
ソレイユはニヤけていた。
プレイヤー情報
光速ぱんち(Lv54)
連盟:なし
戦力:ノーム54人、ニンフ54人、シルフ54人、コロボックル15人、ドワーフ7人、人魚8人、ウンディーネ8人、フェアリー2人、エルフ6人、麒麟2人
課金:重課金
端末:スマホ
本名:日下部
年齢:35才
性別:男性
職業:サラリーマン(営業)
ログイン時間帯:仕事の合間と業務後。
備考:
ヘビースモーカーで、煙草休憩中にゲームをしている。
弱いやつを狙ってポイントを稼ぐのが楽しみ。
実家暮らしで、親からは「ゲームより嫁を探せ」と急かされている。