6.
「あの子と喧嘩しちゃったの?」
「いや……喧嘩ってほどのことじゃないけど、怒らせちゃって」
「あなたがちゃんとあの子の話聞いてあげないからよ。あの子、いますごい泣いてるよ?」
「だって別にそんな話すようなこともないと思って……。毎日話してるわけだし」
「あなたはそうでも、あの子は違うのよ。最近あなたがあまり話を聞いてくれないって悩んでたのよ? 自分の話が面白くないんじゃないかって、ずっとどう話したらいいか考えて」
「そうだったのか、悪いことしちゃったな。あいつにちゃんと謝りたいけど、いまは難しそうかな」
「そうねえ……ちょっと厳しいかも。ねえ、私が忘れさせてあげよっか? 今日のこと」
「そんなことできるの?」
「うん、あの子はずっと寝てたってことにしとくから」
「それ、大丈夫なの? なにか負担になったりとかしないの?」
「大丈夫よ、私がちょっと疲れちゃうだけ。他は全部平気だから、やってあげる。ただ、あの子は何も覚えてないから、今日のことは言っちゃダメよ?」
「分かった。それじゃあ、お願いしようかな」
「ええ、それじゃおやすみ…………」
「……おはよ。今日、なにしてたの?」