②ひとりぼっち
さぢよが、四年生の秋、父はさぢよのコスモスの写生さ、めづらすく「優」ばけた。さぢよは、不思議だ。木炭紙ば裏返すてめるど、父の字っこ、女はやさすくろ、人間は弱えものばいんつくねんでろ、とちっちぇく隅さ書がぃでら。はっ、と思っだ。
さうすて、父は、消えてねくなった。画の勉強さ、東京さ逃げだど、とも言われ、母どの間さ何があったべが、んなも、実家ど母どの間さ何があったが、なもなも、先生さ女がでぎだんだべ、その他さまざまな噂、さぢよの耳さひそひそはっだ。間もねぐ、母、自殺すた。父の猟銃でのど笛ば射っで、即死すた。傷口、石榴だんた。
さぢよは、ふとり残づだ。父の実家、さぢよの一身ど財産の保護ば、引ぎ受げだ。女学校の寮がら出てろ、まんだ父の実家さ舞いもどって、がばっと、さぢよは豹変してまった。
十七歳ばしが持づ不思議だ。
学校からのけえりみぢ、ふらっと停車場さ立寄り、上野までの切符ば買てろ、水兵服のまんまで、汽車さ乗った。東京は、さぢよば待ちかまえてら。さぢよば迎へいれらど、がじゃめしてろ。投げ捨てらぃだ鼻紙だんた、さぢよは転々とすて疲えくしてら。二年は、生きた。へずねかった。討死ど覚悟っこ決めて、母のたった一づの形見の古え古え半襟ばめぐせがらず掛げで店さ出るほど、そったらにも、せっぱつまって、そごさ須々木乙彦が、あらわえだ。




