④ふるさと
さっど素早ぐ、ウヰスキイあびで、
「だばって、ねえ。あの子ば、いま田舎さかえすの、やっぱす、ひでえがら。よぐ、そったごど、しゃべれるっきゃ。あの子ば国へかえさねえでけろ。
おめは、あの子、去年どったごどしちゃあが知ってらが。どったあじゃぐらえだが、知っちゃあべ。東京は、へぐしてで、もう、そったの忘へだんた顔すて呉るばって、田舎は、さしねえ。あの子は、きっど座敷牢だびょん。
一生涯、村さ笑われてろ。田舎のふとだら、三代めへさ鶏っこがめらぃだで、しっかど忘れねんで覚べてで、にぐすみ合っちゃあす。」
「なも。」高須は、落ぢづいで否定す。
「ふるさどは、そんでねえ。肉親は、そったもんでねえ。わっきゃ、ふるさどばねくしだふとの悲劇ば知っちゃあ。乙やんさ、ふるさどが無がっだ。
おめも、知っちゃあべ、乙やんは、わの伯父の、おめがげの子だ。生みの母親どかででへっこすだ。それはへずねえべ。わっきゃ知ってら。あのふとは、おごろくなんべとけっぱった。
自分ばなげだ父親ば、見がえしたれど思ってだ。ずんぶ、秀才だった。全ぐ、まぶかっだじゃあ。勉強もすた。おごろくなんねばまいねと思っでら。歴史さ名ば残すべど考えだ。
だばって、矢尽ぎ、刀折れで、死ぬ前の日、わーさ、親孝行すへ、としゃべっだ。すのんで、すのんで、つづますく生ぎへ、としゃべっだ。わっきゃ、はずめやぐどに、と思っだ。だばって、このごろさなっで、あ、あ、とわんつか合点でぎる。」




