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⑮だめよ
耳もどで囁ぎ、でっけえ黒揚羽の蝶、ひたど、高須の全身ばおおい隠す、そのまま、すっど入口がら飛んでろ、廊下の隅さ、なんもしゃべんねえで、とっとど押すかえすて、
「まあ。ゆるしてけえ。」
ほそらどすた姿の女だ。眼でっけく鼻筋の長え淋すい顔っこで、黒えドレスが似合ってら。
「さぢよど、逢わわせてくねかった。あの子は、たげ、おめのこどば気にしちゃあ。やとかどの評判も、いんだはんで、ね、おねがい、あの子ば、そっとしてけれじゃ。あの子、いま、一生懸命よ。つれえんだ。わーさは、それが判る。あら、おめは、わーば知らねんず。」
顔ば赤ぐすて、「ゆるせじゃ。おめ、高須さんね。んだべ? わー、ふと目見で、はっど思っだ。まさすく、わー、はずめでだんず、だばって、すぐわかっだ。須々木乙彦の、御親戚。どんだ? わー、ずんぶ知っちゃあべ?」数枝だ。芝居がはずまっで、この二、三日、何がどおもやんで、今日はホールば休んで楽屋さ来でら。




