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②昔話
長火鉢ばへだでで、老母は瀬戸の置ぎ物だんた綺麗さ、ちっこく坐っで、伏目がぢ、やがでしゃべることさ、――あれは、わの一人息子で、あった化げ物みんた男ばって、だばって、わは信ずちゃあ。
あいの父親は、こどすで、あげで、七年めえに死んだ。まあ、昔自慢すめぐせえばって、父のまみし頃は、前橋で、ええ、国は上州だんず、前橋でも一流中の一流の割烹店だ。
大臣も、師団長も、知事もろ、前橋であすめるどぎ、必ず、わらのえさ、きまっちゃあ。あのごろは、いがった。わも、むったど、張り合っで、身ば粉にすてけっぱっだ。
だばって、あえの父は、五十のどぎ、まねあすめば覚えまってろ、相場だよ。いぐねくすの、早えかったじ。ふっど気づぐ朝は、なんもねえ。きれがんだ、さっぱど。めごいっきゃ。父は、みなさ面目ねばってろ。




