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④褒めちぎりやがって
「まぶいじゃ。」助七は、眼ば細めで、「初日の評判、おめ新聞で読まねがったが? センセースョン。大センセースョン。天才女優の出現。ああ、にたじんな。ほんとだべさ。わのとこだば、梶原剛氏さ劇評すがったばって、どが、あのじっちゃ涙ば流すてばす、オリガの苦悩ば、この女優にかってしかへらぃだ、と、なんぼろ、たんげじっちゃさ、まいっでまった。どれ、どれ、拝見。」
背後のドアばそっと細めにあげ、舞台ば覗いで、
「何が、こう、貫禄どでも、しゃべってるんたのあったばって。まるっど、別人だんた。ああ、退場すた。」
ドアばぴたどすめで、青年の顔ばぢらど見で、おかしけに笑い、
「めぇ! 落ちついちゃあな。あいづは、まだまだ、大物さなれる。じゃわめぐわー。んだら、あいづは、おかながんね女だはんでな。」




