⑤不幸な二人
レヴユウば見で、そっがら、外ばあさいで、三人、とりやさはった。静がな座敷で、卓さたがり、酒ばのんだ。三人、血ばわけだ兄弟だんた。
「すばらぐ旅行さ出るはんで、」乙彦は、青年ば相手に、さぢよが、たげな、と思ったほどやさすい口調でしゃべっちゃあ。「もう、わーさ甘ずけちゃ、まねよ。君は、出世すねばまいね男だ。親孝行は、そんきで、生ぎるごどの立派い目的さなる。人間なんて、そったらがっぱ、あれもこぃも、できるもんじゃねえ。けっぱって、けっぱって、つづますくしてらんだば、渡る世間さ鬼はね。それは、信じねば、まねよ。」
「今日は、まだ、」青年は、美すい顔さ泣きたがれの表情ば浮べて、「へんだね。」
「ううん。」乙彦も、幼くかぶりば横さ振ってろ、「そえでいんだ。わあの真似なんかしちゃあ、まねよ。君は、君自身の誇りば、がばっと高く持っていふとだ。それさ価するふとだ。」
十九のさぢよは、までえに青年のさがづぎさ、なみなみど酒ばついだ。
「じゃあ出るべ。こぃで、おわがぃだ。」
その料亭のめえで、わかぃだ。青年はズボンさ両手ばつづ込み、秋風の中さ淋すく立っで二人ば見送ってらった。
ふたり切りさなるど、
「おめ、死ぬんだか。」
「わがるが。」乙彦は、わんつか笑った。
「んだよ。わっきゃ、不幸ね。」やっと見つけだと思ったら、もうこのふとは、この世のもんで、ねがった。
「わー、はんかくせえのしゃべってもい?」
「なんだべ。」
「生きて呉れ? わー、なんでもするはんで。どったへずねえことも、けっぱる。」
「なもまね。」
「んだが。」このふとど一緒で死のう。わっきゃ、一夜、幸福ば見たんた。「わー、つまんねえことしゃべった。軽蔑す?」
「尊敬する。」ゆったど答えて、乙彦の眼さ、涙が光っだ。