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①劇場にて
成功だった。劇団は、「鴎座。」劇場は、築地小劇場。狂言は、チエホフの三人姉妹。女優、高野幸代は、長女オリガば、まぶぐ演ずだ。昭和六年三月下旬、七日間の公演だった。
青年、高須隆哉は、三日目で見にく。幕っこあぐ。オリガ、マースヤ、イリーナの三人の姉妹、舞台さいる。やがで、オリガの独白がはずまる。はずめ低ぐで、聞けねんた。青年は、暗え観客席の一隅で、耳ばすますた。とぎれ、とぎれに聞ける。
――あの日、寒みかったわ。雪っこ降っちゃあんだもん。――わー、たげ生きていけねんた、――だばって、まんずあがら一年たって、わーらもその時のごどば、楽な気持っこで思ひ出せるにたったしろ、――(時計十二時ば打づ。)
ゆっくど打づ舞台の時計の音ば、聞いちゃあど青年は、べろっとうるだぐっで、なも、なもど、二度もはげすく舌打すて、そっから、つっ立って廊下さ出だ。




