⑨頑張る
数枝の無礼ば、気さかけねえで、
「あのふと、さ、おがしの。たげ、子供みてえな、じょさける顔っこすて、わっきゃ、乳房って、かっちゃさばすあるど思ってだ、としゃべるんず。
それが、なんもろ、えふりこきしで、なんもねの。めぐせくしてら。
ああ、このふと、たげ不幸な生活すて来たんた、と思っだら、わー、うれすいやら、有難えやら、めごいやら、胸一ぱいさなれ、泣いてまる。一生、このふとさ、かだろと思っだ。永遠の母親、ってしゃべるんだがな。
わーまで、そったおごろいきれがんだ気持さなってろ、あのふと、いいふとでろ。わっきゃ、あのふとの思想や何がは、なんも知らね。知らねばって、いべ。あのふとは、わーさ自信ばけたんだ。
わーでも、もののお役さ立つんだ。ふとの心の奥底ば、やっきど深ぐ温めでけるごどがでぎるど、そう思ったら、もう、そのよろごびのままで、死にてえわ。
だばって、こったに、まるまるどふとっで生きかえってろ、みそくたねえ。生きかえっで、こったに一日一日でご暮すばすすて、そえでいのがど、たまらねぐへずねえわ。大声で叫びてく思うこどあるの。
どうせふとげり死んだ身だす、何でもい、ふとのお役さ立つんだば立ってあげてえ。どった、ゆるぐねことでも、どった、へずねえごどでも、けっぱる。」




