⑥参考にして
「わっきゃ、さあ、歴史的さんも、助七でも、それがら、ほがのふともだばって、みんな好ぎよ。わりいふとなんて、わっきゃ、見だことね。母っちゃも、父っちゃも、みんな、やさすくいふとだった。伯父ちゃも、伯母っちゃも、ずんぶ偉えわ。たげ、頭っこあがんね。はずめがら、そんなんだ。
わー、ふとりが、まねんだ。そった生れづぎ劣っちゃあ子が、みんなさ温ぐめごいってさえで、ふとりばす、あずましくすなんて、わー、もうそんだば、死んでまりてえ。
わー、もじになりてえんだ。なんでもい、ふとの役さ立っで、死にてえ。男のふとさ、おごろいかっこばさせで、行ぐ路々さ薔薇の花ば、なも、すみれぐれえの小っちぇえおががっちゃあ花でもい、すっぱど敷いでろ、その上ば堂々どあさがせてえなあ。
そうすて、その男のふとは、なんも恩さ着ね。こぃは、はじめからだべと、ゆったどつけらっと、行ぎ逢ふふと、行ぎ逢うふとゆったど挨拶ばしてろ澄ますてあさいでらと、まあ、男は、なんぼおごろいべな。どったに、きれえだべか。
それば、わっきゃ、ものがげさ隠えで、誰さもすあせねえで、そっとおがんで、うれすいびょん。女の、一ばん深くきんびいいの、そったどごろでねが。そう思われで仕方ね。」
「わるぐね。」数枝も、耳ば傾げだ。「参考さなる。」




