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②考え直したら?
「ほがに、ねもの。」さぢよは、しゃっけえ両手で、寝でら数枝の顔ばピタっどはさんだ。
数枝さは、なもかもわがっだ。
「つぼけだな。」そうしゃべりながら起ぎあがり、小っちぇえさぢよば、しったど抱いだ。何もねえってらど離れで、
「かでものは? やっぱす納豆がね。」
さぢよも、いそいそ襟巻ば外すて、
「わー買ってく。数枝は、つぐだ煮だべ。海老のづぐだ煮っこ買ってくはんで。」
出でくさぢよば見送り、数枝は、ガスの栓ばむじっで、ごはんの鍋ばのせ、まんだ蒲団の中さもぐり込んだ。
そうすて、その日がら、さぢよの寄棲生活がはずまっだ。年の瀬、お正月、なんもねえまま過ぎた。みぞれっこ降る夜、ふたりは、電気ば消すて、まっくれえ部屋で寝ながらしゃべった。
「さぢよの伯父っちゃは、だばって、いふとだど思うよ。過去のごどは忘へろ、忘へろ。誰だって、みんな、深え傷ば背負っで、そ知らねふりすて生ぎちゃあんだ。いなあ。ずんぶわがだふとだべさ。わっきゃ、惚れだね。」ねむいんた声でそうしゃべって、数枝は、すづがに寝返りば打っだ。




