①対称的な二人
本編さ、女優高野幸代の女優どすての生涯ば記す。
高野さぢよば野薔薇とすんだば、八重田数枝は、あざみだ。大阪の生れで、もどもどへずねえ育ぢの娘だった。お菓子屋ばすてら老父母はまみしい。がっぱ弟妹いでろ、数枝はその長女だ。
小学校ば出はっだきりで、そのうぢに十九歳、問屋がらあねぶやってくお菓子職人どあすめで、ふたりかでで東京さ出で来だ。父母も、はんぶん黙ってら。
お菓子職人、二十三歳。上京すて、ちゃっちゃど、銀座のベエカリイさ雇はれだ。薄給だ。えば持づごどは、でぎね、数枝も同ず銀座で働いだ。あんますおごろくねえバアだ。わんつかづつ離れで、いたでに加速度ばして、離れでまっだ。その職人さは、いま、かがも子も在る。数枝は、平凡な女給だ。
人生は、こったもんだべさ。ふとは、たよりさなね。ちっちぇえごろがら、そうしかへられ、そうすて、そんだもなも思いこんでら。二十四さなって銀座のバアばよすて、踊子さなっだ。このほうが、なんぼか余計じぇんこがどれるはんで。
そのどすの十一月下旬、朝ふと眼ば醒ますと、以前ふとず銀座のバアさつとめでらった高野さぢよが、しょげで枕もどさ坐っちゃあ。




