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⑦なんかおかしくて、笑っちゃう。
けさ、はえく、三木がら電話で、戸山原のことば聞ぎ、男は、からしぐね、とその踊子のけやぐとしゃべって、まんず正午さ、雪解げのじゃげてるのば難儀すて戸山原さたどりづいで、見るど、いまにも、スャツ一枚の姿の三木朝太郎は、助七の怪力さ遭っで、宙に一廻転しちゃあところだった
さぢよは、ふとりで大笑いすた。見でるど、ぐっと二匹の小っちぇえワンコが雪の原で上さなり下さなりあすめたわむれるんたで、期待したった決闘のまぶさは、なんもねがった。二人の男も、なんが笑いながらじょさけてろ、さぢよは、えんか抜げた。間もなぐ、助七は、とくらがって、のれそれ三木、その上さ馬乗りさなって、助七の顔ばぶっただいだ。たぢまぢ助七の、杜鵑さ似だ悲鳴っこ聞けだ。さぢよは、ふらど樹陰がら躍り出で、わんかはっけで走って三木の背後にせまり、傘ば投げで、ピシャッど三木の頬ばぶっだだく。
三木は、ふりかえっで、
「なんだ、おめが。」やさすく微笑すた。立ちあがって、ちゃっちゃど着物ば着はずめ、「おめは、こいつば愛すちゃあんだが。」
さぢよは、烈すく首ば振っだ。




