34/79
⑤殴り合い
「なんだば、それあ。田舎の草角力でねんだはんで。」三木は、そうしゃべって、雪ば蹴っでぱっど助七の左腹さまわり、ぐわんと一突ぎ助七の顎さ当でだ。だばって、それは失敗だった。助七は三木のそのごぶすば早ぐつかめて、がばっと背負投、あざやがにきまっだ。三木の軽い体っこは、雪空さ一回転すて、どさんと落下すた。
「なんなんだば。ほんつけねえな。」三木は、どんずおっこったばって、力一ぺえ助七の下腹部ば蹴上げだ。
「うづ。」助七は、下腹ばおさえだ。
三木はよろよろ立ちあがって、こんどは真正面がら、助七の眉間ばめがげ、ずどんと自分の頭ばぶっけてやっだ。たんげ、決すた。助七は雪の上さ、ほどんど大の字なりにとくらがって、すばらぐ、動ごうともしねかっだ。鼻孔がらは、鼻血がどぐどぐ流れ出す、両の眼縁がみるみる紫色さ腫れあがる。




