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④結局、戦うのか……
「だばってろ。」助七は、がっぱど一歩踏み出す、「その一晩、おめば、ゆるさね。がまんでぎね。よぐも、よぐも。」
「そうが、わがっだ。相手さなる。わーも君には、こでらいね。まんず思いあがっだ野郎だ。」煙草ばぽんとなげて、二重まわすば脱ぎ、さらに羽織ば脱ぎ、わんか思案すてがら兵古帯ばぐるぐるほどぎ、着物まですっぽり脱いで、シャッど猿又ばすの姿さなり、
「女ば肉体ばすで考えるごどできねえんだば、気の毒だな。こごさまで、そのやばつ臭りが移ら。君なんかどやがぐっで着物ばよごすたっきゃ、洗っても洗ってもすみっこ取れねえ。めんどくせえじゃ」しゃべりながら、足袋ば脱ぎ、高足駄ばなげで、さいごに眼鏡ばはづす、「来いへ!」
ビシャンと雪の原、木霊すて、右の頬ばぶったがれだんは、助七だった。間髪ば入れねで、ビシャンと、まんだ、こんどは左。助七は、よろめいでろ。どってんす強襲だった。うむ、とけっぱっで、腰ば落す、両腕ばふろげでよすだ。やがぐれば、こっちのもんだど、助七さはまだ、自信っこあった。




