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方言版 太宰治 火の鳥  作者: かんから
死に別れ
3/79

③お誘い

こんどはステッキ()ずるずる引きずってろ、銀座()あさいだ。(なん)()ねがった。ぼさら(/ ̄)っと水平線()()らんた()眼差で、ぶらぶらあさいだ。落葉が風ささらわれたように、よろめぎ、資生堂()はった。資生堂のなが()、もう灯がついでて、なんぼ(_/)か温かった。熱いコーヒー()、ゆったど(/\)のんだ。サンドヰツチ()、二切くって、よすた。資生堂()出た。


 日っこ暮れだ。


 こんどはステツキ()()かついで、ぶらぶらあさいだ。ふとバア()立ち寄った。


こいへ(/\)こいへ(/\)。」


 隅のソフア()()おろすた。(ふけ)え溜息()ついてろ、そっから両手で顔()覆ったばって()、はっと気()取り直すて(つら)()すゃんと挙げ、


「ウヰスキイ。」と(ひけ)(つぶや)くんたにしゃべっ(/\)て、わん()つか()笑った。


「ウヰスキイは、」


「なんでもい。普通のもんでい。」


 六杯、(つんづ)けて、のんだ。


「つええのね。」


 (めのこ)、両側に座っちゃあ()


んだが(/\)。」


 乙彦は、わん()つか()蒼くなって、さうすて、なんも(/\)言わねんだ。


 (めのご)だぢは、手持ちぶてくしてらった()


「けへる。なんぼ(_/)だ。」


「待ってけ()。」左手()座ってら()った断髪の女、乙彦の膝()軽ぐおさえた。「めやぐ(/\)だわ。雨が降ってるのよ。」


「雨。」


「ええ。」


 逢ったばっかの、なんも(/\)知らね(/\)男女、一切の警戒と含羞とポース()飛び越え、ばふらっ(/\)と話()ちゃあ()不思議な瞬間、この世()、在る。


「いやねえ。わー()、この半襟っこかけでお店()出ると、きっと雨っこ降るのよ。」


 わんが(/\)()るど、浅黄色のぢりめんさ、銀糸の芒が、雁の列だんた()刺繍されてら()(ふれ)え半襟だった。


晴れね(/\)がな。」そろそろポーズ、よみがえって来てら()


「ええ。お草履じゃ、ただで( ̄\)ねえべ(/\)。」


んだか(/\)、のもう。」

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