⑦一方的に
「なもなも。女は、」
すすめられで茶呑茶碗のビイルばのんだ。
「みんな利巧よ。なんでも知っちゃあはんで。までに知っちゃあ。
い加減にちょされちゃあのも、なんだって、みんな知っちゃあ。
知ってで、知らねふりっこして、子供みてえに、雌のげものみでえに、つけらっとしちゃあ。
だって、そのほうが、とぐだべし。男って、正直ね。
何もがも、見えでらのに、だばって、何かと女ばだまがす気で居るんた。
犬は、爪ば隠せねんでろ。いつだったか、わーが新橋駅のプラツトフオームで、秋の夜だったか、電車ば待ってらっきゃ、まんずスマートな犬、フォツクステリヤどしゃべるんだが、一匹わあの前ば走けでれ、わっきゃそれば見送くっで、泣いでまったはんで。
かぢがぢがぢがぢ、あさぐだんびに爪の足音っこ聞けで、ああ犬は爪ば隠せねんだ、と思っだら、犬の正直、いぢらすくて、男って、あったもんだ、と思っだら、たげ悲すくて、泣いてまったわ。酔ったわ。
わー、つぼけね。なすて、こったに、男ば贔負すんだべな。
男ば、弱えど思うの。わー、でぎるんだば、からだば百さすて千さすてがっぱの男のふとば、かばってやりてえど思うわ。
男は、だって、えふりこぎばすてれ可哀そうだとこで。
ほんとうの女らすさだば、わー、かえって、男ばもる強さだと思うの。
わあの父は、女はやさすくあれ、とわーさ教へでいねくなってまったばって、女のやさすさどしゃべるんわ、――」




