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④敗北
さぢよは、ふとり残さぃだ。提燈ばもって、三百いぐづの石の段々ば、ひい、ふう、みい、とちっちぇくかぞえながら降りでって、谷間の底の野天風呂さたどりつき、提燈ば下さ置いたっきゃ、すぐちけくばわったど流れちゃあ谷川の白えうねりが見えで、古え水車がぽつっど鼻のさぎたさ浮んだ。
こええんだ。こそらど湯槽につかっちゃあと、苦痛も、屈辱んのも、焦躁んのも、ずんぶばふらっと霞んでってろ、白痴だんた。
まんずめぐせえ身の上でかって、そえでもくそみてえに、こったにもあずましくしてらんだば、こぃは、わの敗北かも知えねばって、ふとは、たまには、苦の底ばって、うっとりすんのも、いんでねが。
水車は、その重てえからだばわんつか動がすてれ、一むれの野菊の花は提燈のわぎで震えちゃあ。




