19/79
⑦狂おしい
「んだべな。」
助七は、下唇ば突ぎ出す、にぎらど笑っだ。
「やっぱすそうだべさ。んだばって、なっきゃ、まだいんだ。たった一日ばすだ。わだば、なもかも、一年さなるべか。三百六十五日。んだ、おめの三百六十五倍も、わあはあの女さへずねくされでらんだ。なも、あの女さは、罪はね。それは、あのふとの知ねごどだ。罪は、わのいぐねえ血の中さ在る。笑って呉れ。わあは、あの女さ勝ちてえ。あのふとの肉体ば、ずんぶ、欲すい。そんきだはんで。わあは、あのふとさ、たんげひでぐ軽蔑されでら。憎悪されでら。だばって、わさは、わあの、念願があるんだ。えまに、わあは、あのふとさ、わの子供ば生ませでける。玉だんた女の子ば、生ませでける。どんだべ。復讐なんかぢや、ねえはんで。そったよぐだがれなこと、考えてねえ。そえは、わの愛情だ。それごそ愛の最高の表現だ。ああ、そったことば思うだげだばって、へずねえんだ。狂うようになってまる。わがったが。わんど賎民のしゃべるこどが。」
ねぢねぢしゃべっちゃあと、唇の色も変り、口角さは白え泡がたまってろ、兇悪え顔さも見えで来た。




