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⑥いのちの糧
「まんず、いいっきゃ。」貧苦より身ば起す、こいまで十年間、こった純粋の響の言棄っこ、聞いだことねえ。「わあは、こどす二十八だよ。十七のとすから給仕ばすて、ふとば疑ふこどばり覚えで来だ。おめらは、いなあ。」絶句すた。
「ポオズだよ、わんどは。」青年の左の眼は、不眠だとこで充血しちゃあ。「だばって、ポオズの奥さも、いのぢは在る。冷てえ気取りは、最高の愛情だ。わっきゃ、須々木さんば見で、むったど、それば感ずちゃあ。」
「わだってろ、いのぢの糧ば持っちゃあど。」
低ぐそうしゃべって、へんに親すげに青年の顔ばすげすげ眺めだ。
「わかっちゃあはんで。」
「なんもいわね。わあは、もともと賎民だはんで。たがだが一個の肉体ば、肉体だげば、」しゃべりかけでふっと口ば噤み、それがらぐっと上半身ば乗り出させで、「なっきゃ、あの女ば、どう思うべか?」
「気の毒なふとだど思っちゃあよ。」用意すちゃあど思われるほど、すぱど答えだ。
「そんきだが? いや、こごだげの話だばって、ね。えぱだ、何が、感ずねが?」
青年は、顔ばあがらめだ。




