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⑤問い
「おめ、おめさん。」新富座のめえで、やっとかつぐ。「しゃべりてえこと、あるんだばって。」
青年は、振りかえって、
「わっきゃ、おめば憎んでねえはんで。好きだ。」
「なも、しゃべるんでねえ。」にっくらどしゃべったばってろ、青年の、街路樹の下さすらど立っちゃあ絵だんた美すい姿ば見で、がばっと真面目さなった。い男だなあ、と思った。「わんつか、おめさ、しゃべりてえんだばって、なも、わんかだはんで。付き合ってけねべか。わだってろ、――」しゃべりづれく、「なあが好きだ。」
三好野へはった。
「須々木乙彦、というのは、なあの親戚なんだべ?」なあ、としゃべり、おめどしゃべったり、助七は、秩序がねがった。
「いどごだばって。」青年は、熱い牛乳ばすすっちゃあ。朝がら、何もくってねがったとこで。
「どった男だ。」真剣だった。
「わの、わんどの、――」青年は、ごこっだ。
「英雄だが?」助七は、苦笑すた。
「なも。愛人だ。いのぢの糧だ。」
その言葉っこ、助七ば撃っだ。




