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④お前じゃない
「わっきゃ、めやぐだな。」青年は、さきたがら襖さかれくおかがって、つっ立ったままだんた。
「んだが?」さぢよは、きょとんとした顔っこで青年ば見上げ、煙草のけむばふっと吐いだ。
「御自重してけれ。わっきゃ、責任ばもって、おめば引ぎ受げたんだ。須々木さんのためにも、ぎっつどしてけえ。わっきゃ、乙やんば信じちゃあど。どったことあっても、わっきゃ乙やんば支持する。んだばまた、そのうぢ、来るはんで。」
「んですが、きょうは、ありがとう。」かれえ口調でしゃべって、顔ば伏せ、そっと下唇ば噛んだ。
青年ば見送りさ立たねえで、顔っこば伏せだままでろ、ずっとしたった。階段ば降りでく青年の足音が聞けねぐなってから、ふっと顔ばあげで、
「助七。わっきゃ、おめどかででる。どったことあっても離れねえはんで。」
「はんかくせえ。」助七は、めづらすくへたがれた顔っこで、そうしゃべった。「わあわ、そんじゃねえんだ。」べろっと立って、青年のあとばぼる。




