14/79
②銀行強盗
その橋ば越せば、入舟町だ。
「寄ってかね?」わっきゃ、バアの女給だ。
部屋さはるど、善光寺助七、部屋のまんながさ、あぐらばかいでねまっちゃあ。青年ど顔ば見合せ、善光寺は、なんぼ卑屈に、ひひと笑って、
「おめも、おどろいたべ? わだって、がばっと、腰ば抜かしてまった。さぢよ君はね、むったど、こったごど、つけらっとすはんで、弱るだ。社さ情報がはって、すぐ病院さ飛んでったら、この先生、ただ、がじゃめして泣いでらだけ? わげわがんね。そのうぢ警視庁から、記事の差止だ。知っちゃあか? 須々木乙って、あれは、ただの鼠でねくて。黒色テロ。銀行ば襲撃したんた。」
ばふらっと部屋の隅っこさつっ立ってら青年は、
「たすかだが?」蒼ざめちゃあ。
「まんず、五六日もせば、記事も解禁さなるぢ思うばって。」善光寺は、新聞社さつとめちゃあ。




