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方言版 太宰治 火の鳥  作者: かんから
わからないくせに
10/79

④何も知らぬ

あらん(/\)どの私語、ひそひそ室内()充満すた。


「まあ、()。こぃがらはけて()警視庁()来てけれ()あさげ(/\)ねことは、ねえべ(/\)。」


 自動車()乗せらぃ、窓がらちまたば眺めるど、ふとは、(さむ)たくに肩()すくめで、あへず(_/)がしくあさいじゃあ()。ああ、生きてら()ふとが、がっぱ(_/)いる、と()った。


 留置場()()って、三日、そのまま、ほって置かぃだ。四日目の朝、調室()()ばぃで、


「やあ、(おめ)は、なんも(/\)知らねんだ。はんか(_/)くせえ(/\)。けえってけれ()。」


「はあ。」


「帰って、いいはんで()。こぃがらは、気つけい。まともに暮しへ。」


 ふらふら調室から出るど、(くれ)え廊下()、あの青年(わげの)が立っちゃあ()


 さぢよはわんか()笑ってろ、そのまま()げ出す、青年(わげの)の胸()()投げた。


「かえりましょう。わーさ(_/)は、なんだば(/\)わげ()わがね()。」


 このふとだ。あの昏睡のときの、おぼろげな記憶がよみがえって来だ。あのときわっ(_)きゃ()、このふとさ(/\)、すつかり()がさってらった()。こまって、つと青年の胸がら離いだ。


 外()出で、日のひかりが、まぶしくてろ。二人だまって、お濠()沿ってあさいだ。


「どうしゃべろうか、」青年(わげの)は煙草()()つけた。ひょいと首()振って、「まんず(/\)、どまついたなあ。」たんげ(/\)興奮しちゃあ()


すまね(/\)。」


「いや、そのことでねくて。なも()、そのことも、ただでねばっ(/\)て、それよりも、乙やんが、いや、須々木さんのこと、おめは(/\)(なん)も知らねんだか?」


「知っちゃあ()。」


「おや?」


「亡くなってまった()、」しゃべりかけて涙っこ頬()走った。

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