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勇者の妹  作者: 虚言挫折
第七章:帰還
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92.表皮、表裏

山賊からの連絡から数時間が経った。あと少しで山並みの向こうから太陽が昇り、星の気配が消えるであろう時刻に、王子は眠気を感じさせない冷静な足取りと態度で、私の幕舎に入ってきた。

「ゼオムから話は聞いた。いよいよレーグが動くそうだな、グランツ兵士長」

「予測でしかありませんが、動くのであれば今かと」

私は各部隊の隊長に哨戒を命じた直後だったが、直属の部隊だけは身の回りにおいて動かさなかった。

「僕らで止められるのか?」

「止めるだけでいいのです。大臣が反旗を翻そうというのであれば、それこそまさに好機であると考えています」

私の返答に、王子は考え込んだ。

「六国の長としてこの国に重大な影響をもたらす密約を独断で結ばせた、という証拠と目撃情報をあなたは持っている。実力行使にさえ出なければ…」

「武力に訴えたらどうする」

「守るまでです。幸い、六国からの侵略はある程度防ぐことができる状況ができあがっています」

メリド王子は私をまっすぐに見て質問した。

「大臣の狙いである国の乗っ取りという計画が、どのあたりまで進んでいると思う?」

「大臣が穏当な手段を選んでいる場合は、まもなく座礁するでしょう。そうでなければ、もうすぐ計画は成ります」

不甲斐ないことだ、と己の無力さを嚙みしめる。数年前の領地の調査では、大臣の財産は妥当と考えられるだけのものが報告されていた。しかし、妥当なだけでは国の乗っ取りなどできない。

「大臣の力の源が国外にあったことを、想定できなかった私の落ち度です」

頭を下げた私の肩を、メリド王子はぽんと叩いた。

「謝罪の言葉は、全部終わったら聞くよ」


城壁の外から城下町に入り、大通りを抜けて城の門を通る。側近の近衛兵と私と王子は玉座の間に向かっていた。

王は玉座の間で書類に目を通していた。その傍にレーグ大臣が立っている。

「レーグ大臣、話したいことがあるのですが」

「王の御前ですぞ。まずは王に挨拶を…」

不満そうに文句を言うレーグを王は制し、私に話を続けさせる。

「王にもよく事の詳細を聞き、判断していただきたい。レーグ大臣、あなたは六国が結ぶ密約の長になろうとしていると聞いた。本当かどうか答えてもらいたい」

大臣の表情が若干険しくなったが、すぐに何でもないように平静を取り戻す。

「仰ることの意味がよく分かりませんな。どこからそんな話を聞いてきたのです?」

「私だよ」

メリド王子が一歩前に出る。

「私は女王エシトラの頼みを聞いて城を出た。女王は六国の密会に呼び出され、そこに私もついていった。六国の長たちは自分たちのしようとしていることが何かを示すために女王を呼んだと言った」

王子は懐から何か金属片のようなものを取り出して、レーグに見せた。

「これが何かわかるか、大臣。これは『盟約の箱』の断片だ。盟約は成らなかった」

レーグの表情は硬直していたが、皮膚の下では明らかな怒りが蠢いている。

「証拠ならまだまだある。何より私が現場を目撃したんだ。大臣の目的は六国を統合して帝国にすること、そして自分がその頂点に立つことだ」

王子に自分の目論見を暴かれて、レーグは初めて表情を大きく変えた。忌々しさを前面に表出させ、王子を睨んでいる。

「…メリド、我が息子よ。確かに見たのだな?」

「はい」

それまで話を聞いていた王が、王子の返事を聞いてゆっくりと立ちあがる。

「不審に思っていたのだ。前任の大臣の事故死も、どこから出てきたか分からぬ後任を指名する遺言書も、突然変わった部下たちの顔ぶれもな。…長い間、謀反の証拠を探していたが、今の今まで尻尾を隠していたというわけか」

王は自分の腰の左に提げていた剣をマントから覗かせて、静かにレーグを見た。

「なるほど、六国に隠していたか。我々が簡単に干渉できぬ六国に」

言葉の端々から怒りが迸っていた。


「…極めつけは『脅威』の力か。愚か者め」


レーグの呪文と王の攻撃は同時だった。攻撃魔法を消滅させ、大上段から電光石火の一撃を振り下ろす。レーグは後ろに跳んで何度も魔法を放つが、全て消滅させられている。

「メリド、結界を張れ!レーグを城下町に放つな!」

「はい!」

「近衛兵は城の人々を避難させろ!私がお二方の護衛に着く!」

事態は急速に動き出した。レーグは窓を割って外に出たが、ある一定の範囲の外には出ることができないらしく、上側に姿を消した。

「逃がさぬ!」

王と王子もその後を追って飛び、窓の外に出た。

遅れました!!すいませんでした!!まさか予約投稿の日付を間違えてるなんて思わないじゃないですか!!

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