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勇者の妹  作者: 虚言挫折
第七章:帰還
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91.黒い夜

深夜、来訪者が私の兵舎のドアを叩いた。

「グランツ兵士長。バーヴルさんからの使者です」

「通せ」

現われた男はサンチマルの礼法に従って一礼してから、懐の紙を取り出した。

「初めまして、グランツ兵士長。自分はバーヴル総長の使者、ゼオムです。今回の件に関して、サンチマルとの交渉を一任されております」

私は差し出された手紙を受け取り、微かなろうそくの明かりに照らして読む。

『グランツ兵士長、挨拶の余裕はない。端的に用件だけを伝える。六国と三大国との国境で諸侯の密会が行われた。内容はレーグ大臣を長とした六国の帝国化だ。居合わせたサンチマルの王子とエギルの女王、半竜の少女ユマと魔物の少女エミイによって契約は阻止されたが、次の動きがどうなるかは分からない。俺の副官が使者として向かうから、国内のことで俺たちの力が必要ならそいつに言ってくれ。俺はユマの随伴として魔王領に向かう。知らせは受けているだろうが、王子はエギルに少しとどまってから戻るそうだ。俺もなるべく早く戻るが、それまではお前が誰よりも頼りだ。レーグにこれまで以上に注意しろ』

読み終えて、口からどうしようもなくなった時に出る溜息が出てきた。疑問は一気に湧いてきたが、今は状況を受け入れることの方が大事だ。

「状況は分かった。すべきことは多いが、君たちはとりあえず六国とサンチマルの国境でそれとなく睨みをきかせておいてくれ。密会で代表者が集まって目的を果たしていないとなれば、すぐに怪しい動きはとらないだろうが…最悪の場合、六国はすぐに進行してくる。その際は報告を頼みたい」

「…監視と報告だけでよろしいので?」

「事を大きくするわけにもいかないからな。何より、君たちは不意打ちの遊撃部隊として申し分ない存在だ。そして不意打ちが必要になるのは緊急時だ。いざという時に不意打ちを予測させないためにも、我々との関わりは伏せておく必要がある。国境に関しても、独断とみなされるよう振る舞うことが望ましいだろう。それまでは力を蓄え、危機に備えてほしい」

私がそう告げると、使者ゼオムは深く頷いた。

「分かりました。まあ、危機というやつが来ないのが一番いいんですがね」

「そうだな。だがこの調子では、危機は来るだろう…」

気持ちと共に、視線が城の方に向かう。

最近の城は、以前に輪をかけて奇妙なことが起き続けている。武官や文官の異常な逮捕、大幅な人事異動に伴う体制の弱体化、レーグに集中する権力…。

王も愚かではない。それに対策は立ててあるはずだが、にしてもレーグの手は早い。

「レーグはほんとうに凡人なのか…?」

そう呟いた次の瞬間、別の使者が報告のために兵舎にやってきた。

「メリド王子の帰還です」

次回→2024/05/16

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