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勇者の妹  作者: 虚言挫折
第六章:脅威
85/99

85.砦

背中側で手枷が腰に当たる。『真実の軍』という集団に捕まった私は歩きながら、私を連れる兵士の群れを観察していた。規律はしっかりと守られているようで、私たちに声をかけるものも特にいない。おそらく話しかけようとすると

隣でバーヴルがびくびく怯える…ふりをしている。私から見ると非常に滑稽だったが、周囲の兵士は騙されているようだった。

軍の行進が止まった。目の前には古びた砦が聳え立っている。

「着いたのか…?」

バーヴルが不自然なまでに静かな砦を見上げる。空気が張り詰めているが、その理由は規律以外のところにあるように見えた。

「開門しろ」

列の戦闘から命令が聞こえたが、跳ね橋が下りるような気配はない。

「聞こえなかったのか!開門しろ!」

また声を張り上げるが、静寂は変わらない。

「開門しろと言っている!」

蹄の音がわずかに、しかし高らかに聞こえたと同時に、軍全体が一歩前進する。

城壁の上のかがり火が灯り、矢が雨となって無数に降り注いだ。

「うお!やっぱりかよ!」

バーヴルと私は背をつけて手枷で顔を防御する。

「真実の軍というやつとは別の勢力か?」

「そうだろうさ!矢の拡散範囲が的確だからな!移動するぞ!」

矢の雨をかいくぐって、バーヴルについていく。素早く目につかないように兵の隙間を縫って前列付近に来ると、一気に横に逸れて軍を抜けた。

「追手はどうにかしてくれ!」

「そのつもりだ」

私は背後から飛んでくる火球を跳ね返しながら進んでいたが、すぐに真実の軍から号令が轟き、退却し始めた。

「俺たちがいないことは今は気づかれていないはずだが、時間の問題だ。すぐに中に入れてもらおう」

「あいつらを信用するのか?」

「真実の軍には規律しかない。指揮官として、そんな軍は信用できない」

私たちは城門の前に歩み寄り、手枷を掲げた。それを見たらしい城門の上の兵士が問いかけた。

「お前たちは誰だ」

「俺は人間だ。真実の軍の捕虜になっていた者だ」

「私は半竜人だ。人間領にいたが、魔王領に戻る途中でこの男と出会い、共に真実の軍に捕まった」

「…分かった、そこで待て」

兵士は下がり、それからすぐに跳ね橋が下りた。

「急いで中に入れ。いつまた軍が来るか分からん」

言われるままに私たちが砦の中に入ると、すぐに跳ね橋は上がり、指揮官らしき人物が私たちを出迎えた。砦の内側は慌ただしく、荷物が頻繁に行き来していた。

「人間と半竜人。間違いないようだな」

指揮官はゴーストで、鎧だけが浮いているように見える。そのため表情から何を考えているかは読み取れない。

「何をしに来たか知らないが、ここは危険だ。戦いが終わったらすぐに人間領に送り返す」

「まあ待ってくれ。俺はこの半竜人の付き添いで、この半竜人は魔王の城に向かっている。…これ以上のことは本人から聞いたほうがいいだろう」

指揮官の兜がこちらを向いた。なるべく冷静に、私は話し始めた。

「私は名をユマと言う。かつて勇者と旅をしていた者だ。その勇者の妹が魔王城に向かっていると聞き、後を追ってきたのだ」

「勇者は現在どこにいて、何をしている?」

「魔王城だ。脅威に放った封印の呪文が跳ね返され、自らも身動きできなくなっているはずだ」

話し終えると、指揮官は一つ大きく頷いた。

「なるほど、ユマ本人のようだ。…ではその人間も信頼に値するということでいいな?」

「構わない。彼は人間の領地で軍の指揮官をしていた男だ」

指揮官はじろじろとバーヴルを見た。そして、今度はバーヴルに質問した。

「こちらは兵士十人と指揮官一人、敵は百人いる。お前が指揮官だとして、どのように立ち向かう?」

「逃げるさ」

バーヴルは不敵に笑いながら即答した。指揮官は続けて質問した。

「三十人程度の偵察隊に、砦を守る兵士九百名が逃げ去った。砦に罠はあるか」

「罠がないなら逃げないだろうな。三十人程度の相手に罠を仕掛けるかという問題もあるが、その三十人が敵の主力ならそれだけのことはするかもしれん」

「三十人が砦に入ったらどうやって攻めるか」

「先ほど言った状況なら、攻城戦でもいいが、城に置いた罠を使う方が手っ取り早いだろうな」

「三十人はどう守るべきか」

「守らずに捨てて城に敵をおびき寄せるべきだ。城の罠があるならそれはそのままにしておく方がいい」

「決まりだな」

指揮官はそう言うと、城の地図を取り出して近くの机に広げた。

「我々は真実の軍の移動ルートを探る情報を得るためにここを占拠した。探索が終われば引き払うつもりだ。ここには正門が一つ、側部に出口が二つある。敵が入り次第側部は塞ぎ、城壁を飛び降りて脱出する。起爆は跳ね橋に仕掛けた魔法陣によって行う。そのあとは魔王城に直進する」

「ふむ…」

バーヴルは何か考え込んでいるようだった。そこに、一人の兵士が報告にやってきた。

「指揮官。情報を集め終わりました」

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