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勇者の妹  作者: 虚言挫折
第六章:脅威
82/99

82.方向性

会議場の後始末に慌ただしくなる兵士たちを尻目に、私たちは現場から少し離れた場所で座っていた。

白い柱の下で防御魔法を使っていたサンチマルの王子であるメリド、エギルの新女王エシトラとその従者エミイ、そして私の四人が、切り株を囲んでいる。

「なぜ私のことを知っていたのですか、メリド王子」

「勇者とともに世界を歩き魔王領に向かった、魔族の戦士がいるという話は国では有名な話です。容姿も情報通りだったのですぐわかりましたが…」

話を聞いていたエシトラ女王が質問を挟む。

「ユマと言ったな。貴公はなぜここにいるのだ」

答えから逃れることはできなかった。少し間を置いた後、私は無理やり口を開く。

「私は勇者に、ミトナを託されました。ミトナが無事でいることができるように、見守っていてほしいと。それで彼女を追い…サンチマルでは、ミトナの行く手を阻もうと彼女を襲いました」

行動を振り返ると、明確に私の焦りが浮き彫りになって後悔に胸を突かれる。

「襲わなくてもよかったんじゃ…」

エミイが呟く。その通りだった。

「今思えば手段を選ぶことはできたと、私も思います。しかし、彼女を止めることはできませんでした。それ以降私は彼女を見守るべく移動することに決めました。彼女はサンチマルを出てエギルに向かい、今はロナ王国に向かっているようです。彼女を追う途中でこの場所を見つけ、立ち寄ったところあのような事態になっていました」

一通り話を聞いて、エシトラ女王が新たな疑問を投げかける。

「勇者は今どこにいて、何をしている?魔王の領で何があったのだ」

「…それを説明するにはまず、『脅威』というものの存在に触れなくてはなりません」

「きょうい?」

「エミイに説明してくれ。我々は理解している」

「分かりました」

私の左隣の少女に体を向ける。少女は背筋をピッと伸ばす。

「それは『悪意の根源』とも呼ばれます。あらゆる古い生物の悪意を栄養にして生まれ、自分で膨れ上がる。正体は分かっていませんが、脅威が知性に近い何かを持っているらしいことは分かっています。分かりますか?」

「多分…」

「多分くらいでいいと思います。それ以上のことは分かっていませんから」

私は再び正面を向く。

「魔王はこの『脅威』を危険なものであるとみなし、対処を乞うべく十年前に人間の領地に飛竜の部隊を送ったそうです。しかし、サンチマル付近で隊長のみが命を落とし、王に会うことなく帰投したとのことです。魔王は次なる手として、互いの領地に橋をかけてこちらに向かい、直接交渉しようと考えました。その動きを察知したサンチマルの王が勇者を向かわせ、私は勇者についていきました。魔王領についた勇者は一連の事情を聞き、それをひとまず報告するために帰ろうとしました。脅威はそのタイミングで、魔王城の地下で目を覚ましました。魔王と勇者で脅威に抵抗し、勇者は…封印されました」

「封印?」

「はい。脅威に対して放った封印の魔法を跳ね返されたのです。脅威も沈黙しましたが、完全に活動が止まったわけではありません。殺し切らなくては…」

一通り話を聞き終えた後、メリド王子が不思議そうに尋ねた。

「ミトナに会ったということは、勇者が封印されてから君がサンチマルに入ったということだが、王に会ったのか?」

「いえ。会いに行こうとしたら、レーグ大臣に面会を拒絶されました。ほかの主要な幹部にも会えず…。ミトナを襲ったのはその直後です。レーグ大臣に話すべきか分からなかったので、森長以外には誰にも話していません」


「山賊だ!」

会議場の跡から声が聞こえる。急いで私たちは騒ぎのほうに向かう。背の大きい、ぎらついた目つきの男がメリド王子を見たとたんに下馬してひざまずいた。

「バーヴル!」

「ご存じで?」

「元々僕の部下だった男だ。今は在野のものを率いてサンチマル付近の警備を率先して行っている。いったいなぜここに?」

「俺たちは森長のところに寄ったんだが、森長にここに向かって魔王城に向かうまでの護衛をするよう言われてな。だが魔王城に向かう人間なんて心当たりがねえもんで」

エシトラ女王が私に視線を向けた。

「ここに一人いるぞ。魔王城に向かうものが」

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